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経済学研究科と公共政策大学院でジョイント・セミナー開催
「グリーン・ニューディールの経済学」

 昨年のアメリカ発の世界金融経済不況を克服すべく,オバマ大統領は,「グリーン・ニューディール」の政策を掲げ,経済危機と環境危機を同時に解決する政策を打ち出しました。そのもとになる政策は,「グリーン・リカバリー」(緑の回復)というマサチューセッツ大学政治経済学研究所の提案です。マサチューセッツ大学は,言うまでもなく,クラーク博士が学長を務めた北大ゆかりの大学であり,経済学部も交流協定を結び派遣交換学生の制度を持ってきました。
 今回,全学で開催された「サステナビリティ・ウィーク2009」の国際シンポジウムに出席された同大学の政治経済学研究所の准教授・ジェームズ・ハインツ氏を招いて,11月5日(木)午後,「グリーン・ニューディールの経済学」のセミナーを開催しました。グリーン・ニューディール政策の2つの柱は,産業と雇用の再生を目指す再生・再投資法(ARRA)と温暖化対策のクリーン・エネルギー保障法(ACESA)です。再生・再投資法は,総額71兆円に及ぶ減税と地域再生を行い,そのうちクリーン経済促進に約9兆円の投資を予定しています。第1の柱は断熱修繕工事です。アメリカの住宅は断熱が悪く,その修理を行う技術はすでにあり,建設労働者の雇用を創出し,全米の地域経済を活性化する効果があります。第2の柱は送電網の整備であり,スマート・グリッドと呼ばれるものです。第3の柱は再生可能エネルギーの開発であり,風力,太陽光,バイオマスの順に競争力があるといいます。第4の柱は公共交通網の整備であり,高速鉄道や新型市電などの整備です。もう1つの柱は温暖化対策法であり,下院でクリーン・エネルギー保障法が通過したものの,上院では審議が始まったばかりです。
 
マサチューセッツ大学アマースト校政治経済学研究所副所長ジェームズ・ハインツ氏 ジョイント・セミナーの様子
マサチューセッツ大学アマースト校政治経済学
研究所副所長ジェームズ・ハインツ氏
ジョイント・セミナーの様子
 
 講演では,これまでの技術と経済が労働節約を追求してきたのに対して,環境を守り,雇用を創る「資源環境節約」に転換する必要性が強調されました。質疑では,アメリカにおける原子力発電と温暖化対策法の見通しについて,質問が相次ぎました。北大とマサチューセッツ大学の長きに亘る交流が現代的テーマで行われたことは大変意義深いものでした。
 
(経済学研究科・経済学部)
 

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