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総合博物館がカイザースラウテルンで開催された標本展示に協力

 総合博物館は平成21年11月にゼンケンベルグ自然史博物館及びストラスブール動物学博物館と学術交流協定を締結しました。(北大時報平成21年12月号参照)。その後12月にかけて,協定締結後初めての3館共同事業が開催されました。
 3館共同事業とは,ドイツの小都市カイザースラウテルン(Kaiserslautern)と日本との交流130年を記念して11月20日(金)から12月18日(金)までの同市の地方銀行Kreissparkasse本店で開催された“Ludwig Doderlein und die Seesterne von Enoshima”(ルードウィッヒ・デーデルラインと江ノ島のヒトデ)と題する共同展示です。東京大学のお雇い外国人教師として1879(明治12)年 に来日したデーデルラインが主に相模湾で収集した動物標本を3館が共同で研究したことが学術交流協定締結の原動力となり,今回の展示はその延長線上,つまり3館学術交流における初の共同事業だったわけです。この展示にちなんで“Seesterne aus Enoshima”(江ノ島のヒトデ)と題する約100ページの解説本も出版されました。
 さて,カイザースラウテルンは,フランクフルトの南西,フランスとの国境近くに位置し,2006 FIFAワールドカップにおける1次リーグ・グループFの日本対オーストラリア戦が行われたことで日本でも一躍有名になった人口10万人ほどの美しい小都市です。デーデルラインの義父イエアン・シェーンは羊毛糸紡績工場の工場長として同市の経済発展に大きく貢献し,当時のその家族の住居跡は現在「カイザースラウテルン日本庭園」となっていること,そして,デーデルラインの夜叉孫が現在居住していること等々が今回の展示をもたらしました。ドイツ国鉄のカイザースラウテルン中央駅から繁華街を横切って15分も歩くとKreissparkasse本店に着きます。本店の近代的な建物を入るとまず,吹き抜けのロビー正面受付カウンターの上部壁に掲げられたタカアシガニのつがい標本が目に入ります。このデーデルライン収集標本は現在ストラスブール動物学博物館が所有しているもので,その一見異様な姿と近代的な銀行のロビーに飾られたクリスマスツリーとのミスマッチが目を引きます。このような奇抜な展示を行う勇気のある銀行は日本にはないかもしれません。タカアシガニ標本からロビーに目を転じると,そこかしこに置かれた背の高いガラスケースの中に,様々な日本産動物の標本及び写真,デーデルラインゆかりの品々,日本の分類学者たちの研究報告書,学術論文,書籍等々が展示されています。銀行を訪れたお客さんたちの多くが立ち止まって展示を興味深く見ている姿が印象的でした。この展示は,ゼンケンベルグ自然史博物館のJoachim Sholz博士,ストラスブール動物学博物館のMarie-Dominique Wandhammer館長,そして本学総合博物館の馬渡館長の共同企画で実現したものです。
 馬渡館長が同市を訪れた12月2日(水)には記念講演会が開催され,昭和天皇が収集された相模湾産動物標本を所蔵している国立科学博物館筑波研究資料センターの並河洋博士がデーデルラインと昭和天皇の収集標本の関連について講演しました。講演会終了後のパーティーで関係者一同は展示の成功を祝い,再会を約束しました。今回の共同展示は,学術交流協定の締結が総合博物館のグローバル化及び今後の発展に大きくプラスすることを示しました。総合博物館はこれから,様々な分野の研究者・学生の交流,あるいは貴重な標本の交換等々,2館との間で実質的な交流を深めることで,北海道大学における文化の発展に寄与したいと考えています。
 
カイザースラウテルンKreissparkasse本店の正面玄関「ルードウィッヒ・デーデルラインと江ノ島のヒトデ展」のポスターが貼ってある。 カイザースラウテルンKreissparkasse本店ロビーに展示された昭和天皇の御著書「相模湾のヒドロ虫類」とデーデルライン収集のヒドロ虫標本
カイザースラウテルンKreissparkasse本店正面玄関
「ルードウィッヒ・デーデルラインと江ノ島のヒトデ展」の ポスターが貼ってある。
 
  カイザースラウテルンKreissparkasse本店ロビー
に展示された昭和天皇の
御著書「相模湾のヒドロ虫類」と
デーデルライン収集のヒドロ虫標本
カイザースラウテルンKreissparkasse本店ロビーに展示された標本やデーデルラインゆかりの品々 「ルードウィッヒ・デーデルラインと江ノ島の
カイザースラウテルンKreissparkasse本店ロビーに
展示された標本やデーデルラインゆかりの品々
 
 
 
 
 
 
  「ルードウィッヒ・デーデルラインと
江ノ島の ヒトデ展」のチラシ表紙
カイザースラウテルンKreissparkasse本店ロビー 今回の共同企画展示の関係者たち左から馬渡駿介総合博物館館長,カイザースラウテルン工科大学Dr. Hanns Stephan Wust教授,デーデルラインの夜叉孫Dr. Klaus Doderlain,“Seesterne aus Enoshima” (江ノ島のヒトデ)の出版社代表Frau Karin Afshar,ゼンケンベルグ自然史博物館のDr. Joachim Sholz,今回の企画で独日・日独の翻訳を一手に引き受けてくれたオオツキミズホさん,Kreissparkassse の経営陣のお一人Herrn Kai Landes,そして国立科学博物館筑波研究資料センターの並河洋博士
カイザースラウテルンKreissparkasse本店ロビー
の受付カウンターに展示された
デーデルライン収集タカアシガニ標本
今回の共同企画展示の関係者たち
左から馬渡駿介総合博物館館長,
カイザースラウテルン工科大学Dr. Hanns Stephan Wüst教授,
デーデルラインの夜叉孫Dr. Klaus Döderlain,
“Seesterne aus Enoshima” (江ノ島のヒトデ)の出版社代表
Frau Karin Afshar,ゼンケンベルグ自然史博物館のDr. Joachim Sholz,
今回の企画で独日・日独の翻訳を一手に引き受けてくれた
オオツキミズホさん,
Kreissparkassse の経営陣のお一人Herrn Kai Landes,
そして国立科学博物館筑波研究資料センターの並河洋博士
 
(総合博物館)
 

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