総合博物館では,平成16年より,「準分類学者(パラタクソノミスト)養成講座」を開講しています。各講座修了者「準分類学修了証」を発行しており,大学生・大学院生の教養教育の場として,博物館ボランティアや環境調査会社職員のスキルアップの場として,そして,学芸員・教員・自然観察指導員のリカレント教育の場として,利用されています。11月および12月には下記の日程で,8つの講座を開催しました。 |
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植物パラタクソノミスト養成講座(初級:コケ植物) |
11月7日(土)に,斜里町立知床博物館学芸員の内田暁友氏を講師に迎え,総合博物館において開催されました。今年は,定員の3倍近くの応募があり,厳正な選考を経て,12名が参加しました。
午前中は,コケ植物についての基本的な講義が行われ,美しい写真と共にコケ植物の魅力が紹介されました。また,講師が採集したゼニゴケ類を見ながら,コケの体のつくり等を観察しました。
午後からは,まず,生物顕微鏡で観察するため,ケーラー照明による顕微鏡のセッティングを行い,スギゴケ(セン類)の標本の乾燥状態と水で戻した状態を観察した後,葉を実体顕微鏡で観察しました。また,実体顕微鏡下でカミソリの刃を用いて葉の横断面切片を作る実習を行い,受講生は苦労しながらも同定に必要な横断面の特徴が分かるような切片を作成しました。その後,トサカゴケ(タイ類)の花被(造卵器),造精器の様子を実体顕微鏡で観察し,最後にイボミズゴケ(セン類)の葉の細胞配列や「イボ」を生物顕微鏡で観察した後,染色液メチレンブルーを用いて葉を染色し,「孔」を観察する方法を実演していただきました。 |
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植物パラタクソノミスト養成講座
(初級:コケ植物)において作業の指導をする
内田講師と参加者 |
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石器パラタクソノミスト養成講座(中級) |
11月14日(土)に,本学埋蔵文化財調査室助教の高倉純氏を講師に迎え,総合博物館において開催されました。昨年初めて開催された石器(初級)を受け,今年は,石器(中級)が開催されました。
午前中は,石器に残された物理的特徴を考古学者はどのように読み取るかを説明しました。そして,石器を観察した後,その形態や物理的特徴を実測(スケッチ)しました。午後からは,石器の技術的・形態的特徴に沿って分類作業を行い,専門用語を使いながら記述しました。そして,最後に,受講者自ら原石を打ち割り,石器作りを体験しました。
この講座を通して,考古学者が先史時代の生活や文化を復元するために実施する石器の研究方法を学ぶことができました。 |
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石器パラタクソノミスト養成講座(中級)において
石器作りに取り組む参加者 |
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岩石パラタクソノミスト養成講座(中級) |
11月21日(土)と22日(日)の両日,当館資料部研究員の在田一則氏を講師に迎え,総合博物館において開催されました。
1日目の午前中は,プレートテクトニクスについての説明や,岩石のでき方,できる場所についての講義が行われました。その後,午後からの実習に向けてその手順についての説明を受けました。また,午後からは,上皿天秤を使って,岩石の密度を測定する実習を行いました。この実習で,岩石の種類と密度には,大きな関係があることを体感しました。その後,偏光顕微鏡という特殊な顕微鏡を使うために必要な光学的な基礎知識についての講義を受け,実際に偏光顕微鏡を用いて岩石の薄片を観察する実習も行いました。
2日目は,1日目に引き続き,偏光顕微鏡を使って岩石を見分ける実習を行いました。偏光顕微鏡を使って,様々な種類の岩石の薄片を観察し,主要な鉱物を見分ける方法について実習しました。わからない鉱物がでてくると,参加者は個別に質問し,講師に解説していただき,理解を深めました。また,薄片の中から,好きなものを選び,スケッチすることにも挑戦しました。 |
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岩石パラタクソノミスト養成講座(中級)において
偏光顕微鏡を用いた実習に取り組む参加者 |
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土器パラタクソノミスト養成講座(中級) |
11月29日(日)に,当館資料部研究員の小野裕子氏を講師に迎え,総合博物館において開催されました。今年の春初めて開催された土器(初級)に参加された方を含め,7名が参加しました。
午前中は,まず,「縄文文化の日本列島と北海道」と題して,縄文文化についての概説的な講義が行われ,縄文文化成立の背景となった「地球環境の変化」や「様々な要素を持った人々の日本列島への定住」などについて詳しく学びました。また,縄文土器の縄文をつける(施文)ための道具(原体)やその方法についても講義されました。そして,午後から,側面圧痕と回転圧痕を施文し,観察するため,繊維を撚って縄(原体)を作成し,実体顕微鏡で観察しながらスケッチしました。
午後からは,まず,ウッディ粘土を用いて,午前中に作成した原体を押しつけ,ころがし,施文し,側面圧痕と回転圧痕を観察する実習を行いました。どのような原体をどちらの方向に転がしたかを読み取れないと,土器の縄文を観察できないことを体験的に学びました。次に,実践編・応用編として,講師が用意した4つの土器文様を観察し,どのような原体を用いて,どのようにして施文したかを読み取り,手元にある原体を用いて同じ文様を粘土に施文する実習を行いました。また,「絡状体」や3段の撚り縄の作成と,その側面圧痕や回転圧痕の施文,観察も行いました。 |
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土器パラタクソノミスト養成講座(中級)において
解説する小野講師 |
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鉱物パラタクソノミスト養成講座(中級) |
12月5日(土)と6日(日)の両日,大学院理学研究院講師の三浦裕行氏を講師に迎え,X線回析装置を用いて肉眼鑑定ではわからない鉱物を同定する方法について学びました。本講座は,9名を2組に分け,1日講座を2回開催する形で行われました。
午前中は,鉱物の結晶構造を解く際に使われるX線回析の基本的な考え方や,X線回析装置の簡単な仕様についての講義が行われました。その後,肉眼鑑定ではわからない鉱物をX線回析で同定する方法について,演習を交えながら説明を受けました。
午後からは,粉末X線回析装置を用いて,参加者が持参したサンプルをX線回析し,データを測定しました。その後,測定データをもとに,参考書などを用いて各サンプルの鉱物相の同定に挑戦しました。 |
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鉱物パラタクソノミスト養成講座(中級)において
X線回析装置を用いた実習に取り組む
参加者と三浦講師 |
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DNA実験パラタクソノミスト養成講座(初級) |
12月5日(土)と6日(日)の両日,当館資料部研究員の小林憲生氏と舘卓司氏を講師に迎え,総合博物館と理学研究院において開催されました。今年度初めて開催された講座でしたが,定員の2倍以上の応募があり,4名が参加しました。
1日目の午前中は,理学部の実験室にて,機器類の具体的な使用方法や注意点などの説明を受け,各自2種類のショウジョウバエをサンプルにしてDNAを抽出する実習を行いました。午後からは,午前中に抽出したDNA内の目的領域を増幅させる実験を行い,その後,翌日の実習に向け,実験結果をチェックし,実験から得られた産物を精製する方法や塩基配列決定に関する説明を受けました。
2日目は,午前中に,1日目に抽出し,目的領域を増幅させたサンプルを精製し,塩基配列を決める機械にセットした後,配列が得られた場合の比較方法や系統を推定するためのソフトウェアについての解説を受けました。午後からは,各自のデータを回収して,全員のデータを使って比較や解析を行いました。 |
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DNA実験パラタクソノミスト養成講座(初級)
に
おいて実習に取り組む参加者 |
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鉱床パラタクソノミスト養成講座(中級) |
12月12日(土)と13日(日)の両日,当館教授の松枝大治氏と当館研究生の鳥本准司氏を講師に迎え,総合博物館において開催され,8名が参加しました。
1日目は,まず,鉱床序論として,レアメタル・クライシスや環境問題,水資源問題などの身近な問題をからめながら,鉱床学の基礎知識等に関する講義を受け,午後からは,身の回りに潜む鉱物や鉱石についての話や北海道の鉱石・鉱床に関する話を数多く聞きながら,博物館見学を行いました。その後,それぞれの鉱石にまつわる様々な話とともに,標本観察を行いました。
2日目は,まず,午前中に,偏光顕微鏡の構造や原理,使用方法,そして鉱石の観察と同定に関する講義を受けました。午後からの実習では,偏光顕微鏡についての詳しい説明と,実際に偏光顕微鏡を用いながらの解説があり,その後,初級と上級と2段階に分けて偏光顕微鏡を用いた実習を行いました。 |
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鉱床パラタクソノミスト養成講座(中級)において
鉱石を解説する松枝講師と参加者 |
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化石パラタクソノミスト養成講座(初級) |
12月12日(土)に,当館准教授の小林快次氏を講師に迎え,総合博物館において開催されました。当初は6名の募集でしたが,応募者が多数に上ったため,10名の参加となりました。
午前中は,脊椎動物の骨格のつくりやその進化,古生物の研究法などに関する講義を受けた後,2つのグループに分かれ,バラバラになったワニの骨格標本を組み立てる実習を行いました。講義内容をヒントに各骨の形態や大きさに着目し,数十個もある骨を組み立てていきました。
午後からは,まず,骨を同定する際のポイントについての説明を受けながら,午前中に組み立てたワニ骨格の答え合わせを行いました。続いて,骨化石のスケッチ・計測実習を行い,それを終えると,3階のアイランドアークの展示室に移動し自身のスケッチと計測データだけを頼りに,どの標本のどの部位の骨なのかを同定することに挑戦しました。 |
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化石パラタクソノミスト養成講座(初級)において
解説する小林講師と参加者 |
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(総合博物館) |
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