前監事 木 谷 勝 |
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私の監事在任期間は第1期中期目標・中期計画の最後の2年間に当たっていた。第1期の締めくくりと同時に次期中期目標・中期計画が立案される時期であった。そのような重要な時期に監事として大学の運営状況を見ることができたことを意義深く感じている。
就任にしてすぐにその年度の監査計画を立てる必要があり,中期計画・中期目標,年度計画,年度実績報告書,部局の中期目標・中期計画を始めさまざまな文書に目を通し,事務局の各部から,それぞれ所掌する業務について資料に基づく説明を受けた。これによって広く浅くではあるが北大の現状を把握し,国立大学等監事協議会の業務監査タスクフォースチーム報告書も参考にしながら,部局の実地監査を含む監査項目を設定した。
監査計画と併行して6月に前年度の財務諸表等に関する監査報告書を作成したが,これにはやや違和感があった。その年度の実質的な監査は前任者が行っており,現監事はそれを受けて監査報告書を作成することになるからである。この点の改正を含めた国立大学法人法改正案が国会に提出されていたが,廃案になった。今後の改正を期待したい。
大学の運営状況は,主として役員会,教育研究評議会,部局長連絡会議,経営協議会に出席することによって把握していたが,役員会などに上がってくる議事や資料は教育改革室,企画・経営室などの総長室会議の審議を経て提出されるものが多いので,2年目にはこれらの会議にも出席することにした。これにより役員会などの議事の背景や関連する事項などがよく分かるようになった。とくに役員会では率直で活発な議論が交わされており,議事内容をより深く把握する上で大いに参考になった。
監事監査の結果としてどのような指摘事項を挙げるかについては,悩ましい面があった。現在の法人評価においては監事監査で指摘された事項について,執行部がどのような対応をしたかについて直截的に説明することが求められているため,執行部が直ちに対応できない事項を指摘すれば,評価に負の影響を与える可能性がある。しかし,執行部が監事監査の指摘事項についてどのように,いつ対応するかは,大学運営の数ある諸問題の中で執行部が優先順位に従って判断することであって,機械的に監事監査に対する対応を評価項目として取り上げることは適当ではないと思う。このことは,文科省および国大協に提出された監事協議会のアンケート調査報告書に盛り込まれたいくつかの提言の一つになっている。
監事の業務には監査室の支援が不可欠であった。監査室長との週1回程度の意見交換や情報交換,臨時監査の日程調整,資料収集,監査報告書の取りまとめ,監事協議会北海道支部会の事務など様々な支援を受けた。監査室には監査室本来の業務があるので,監事専属のスタッフを配置すれば,より充実した資料収集や多方面の監査が可能になると思う。
在任中は,大学で行なわれるシンポジウム,講演会などの行事にはできるだけ多く参加するように努めた。なかでもサステナビリティ・ウィークにおける多くのシンポジウムは,自然科学,医科学,工学,社会科学,人文科学など多岐にわたる北大の研究者の研究活動,国際的活動を知るよい機会であった。2008年に国連事務総長が北大で講演をされたとき,学生諸君が臆することなく活発に質問をしていたこと,サイエンスコミュニケーター養成ユニットの受講生諸君がサイエンスカフェの企画,運営に素晴らしい能力を発揮していたことに感銘を受け,頼もしく感じた。
就任して数ヵ月後に,文科省による監事ヒアリングがあった。総長のリーダーシップに基づく法人経営が行なわれているか,役員会,経営協議会,事務局などがそれぞれその役割に応じた機能を十分発揮できているか,業務の効率化は進んでいるかなど,いずれもある程度の経験を積んだ段階でなければ応えることが難しい設問が多かった。慎重にメモを作成してヒアリングに臨んだことが思い出される。
昨年11月に元学長有江幹男先生が他界され,12月中旬にお別れの会が北大と先生が理事長を務められた学校法人尚志学園との共催によって挙行された。私は有江先生の門下生で,尚志学園理事長の西安信さんと高校,大学の同期生であったこともあり,佐伯総長からお別れの会のお世話を依頼された。700名近い同窓生や関連の方々の出席をいただいて,有江先生をお送りできたことは門下生の一人として誠にありがたく,心から感謝している。事務的な支援を受けた総務部総務課に厚くお礼申し上げる。
監事の業務を通して,役員の方々を始め,多くの教員,職員の方々にお会いし,北大が素晴らしい人材を擁していることを再認識することができた。監査の際には部局長から多忙にもかかわらず,行き届いた説明や資料の提示,意見などをいただいた。それらの意見などの主旨は監事の所見とともに監査報告書に記載した。監事監査が北大の運営の改善に少しでも役立つところがあれば幸いである。北大のますますの発展を願っている。 |
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