前監事 山 本 穫 |
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私は,この3月で2年間の任期を終えて監事を退任しました。役職員の皆様には大変お世話になり,ありがとうございました。
私は,昭和32年に北大に入学し,36年3月に法学部法律学科を卒業しました。その後弁護士として大学には殆んど関係することなく過ごし,まさに半世紀ぶりに大学に関わることになりました。キャンパスには昔懐かしいところも数多く残っておりましたが,見るもの,聞くことがすっかり変わってしまい,まさに今浦島の感がありました。月に数回,四季折々に姿を変える構内の豊かな自然の中を散策しながら通うことは大きな喜びでした。そして,学位記授与式に参列させてもらい,全員での都ぞ弥生の大斉唱で受けた感動は忘れえないものとなりました。
元監事の伊東孝さんから監事就任を打診されたとき,「数字に疎い」と尻込みしましたが,「会計は会計監査人が見るから心配ない。ただ大所高所から眺めていればよい」「母校のために何かするのも悪くないよ」と言われ,安易にお引き受けしたわけです。
役員会や教育研究協議会などの会議にオブザーバー参加させてもらいましたが,次から次に分からない言葉や事項が続出してきて,議論についていくのが精一杯の有様でした。監事としては本来,建設的は提言や有意義な指摘をすることが望まれるところでしょうが,とうていそこに至らずに終わってしまい,忸怩(じくじ)たる思いをしております。野球に例えれば,ベンチ入りして,ウオーミングアップをして出番を待っているうち,試合が終わってしまったような感じです。
国立大学法人の会計基準には悩まされました。もともと企業会計すら良く知らない身には,何かと評判の悪いこの制度は難解極まるものでした。退任を迎えた今も,十分理解していると言い切れない惨めさです。
任期中とくに記憶に残ったのは,平成21年1月から3月に行った科学技術振興調整費戦略的研究拠点育成事業「北大リサーチ&ビジネスパーク構想」事後評価結果に係る調査でした。これは本構想が文科省の評価委員会で総合評価Cとされたことから,佐伯総長から木谷監事,私及び職員2名のチームに「当初の構想が実現しなかった経緯と原因」について調査し報告することを要請されたものでした。資料に当たるほか関係者約10人に面接して事情を聴取して調査しました。短期間であったため解明できなかった点もありましたが,その中で法人移行期を挟んで数多くの複雑な関係,微妙な人間関係があったことが浮かび上がり,驚きを禁じ得ませんでした。
通常の業務監査では,年度当初に立てた計画に基づき,あらかじめ質問事項を通知して資料を提出願い,部局の責任者から事情を聴く手法が採られます。この調査の経験から,特定事項を対象とした監査の必要性と上記方法の有効性を感じた次第でした。
監査に訪れた際,部局等の施設を見学させてもらいましたが,低温科学研究所ではマイナス50度を体感させてもらい,また北方生物圏フィールド科学センター七飯淡水実験所ではイトウやチョウザメの飼育状況を見せてもらったのは貴重な体験でした。
私は,日頃本学の役職員が法人の自立に向けて努力を続けていることを見たり聞いたりして,心強く感じておりました。ただ,監事協議会で時々話題とされておりますが,今後法人化の精神が教職員の隅々まで徹底されることが肝要と思います。
国立大学法人は,第1期6年の中期目標・中期計画の期間を終えて,今年度から第2期に入りました。いわば小学生の6年を終えて,中学,高校時代に進んだわけです。親たる国・文科省の要求はさらに厳しくなり国民の期待はますます強まると思われます。
政権交代がありましたが,国の政策は不透明さが残り,財政状況は逼迫の度を深めております。去年末の事業仕分けに見られた教育研究費への風当たりはますます強まり,国立大学法人にとっても多難が予想されます。
北海道大学のますますのご発展を祈念いたします。 |
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