訃報

名誉教授 加来 照俊(かく てるよし) 氏(享年78歳)

名誉教授 加来 照俊(かく てるよし) 氏(享年78歳)

 名誉教授加来照俊氏は平成22年6月2日午前4時44分,肺がんのためご逝去されました。享年78歳でした。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,昭和6年7月6日,北海道留萌郡小平町でお生まれになりました。昭和29年に北海道大学工学部土木工学科を卒業,さらに同31年に同修士課程を修了され,その後北海道開発局に6年ほど出向された後,昭和39年6月に北海道大学工学部助教授として迎えられ,同47年4月に教授になられています。爾来助教授時代も含めますと30有余年にわたり,北海道大学の工学教育,および工学研究にご尽力され,この間200名近い卒業生,100名近い修了生を研究室から世に送りだしています。卒業生それぞれが北海道開発局や国土交通省などでの局長をはじめとする幹部職員,多くの大学での教員,あるいは建設業界をはじめとする実業分野で指導者として活躍されておられます。
 工学研究におきましては,交通工学,とりわけ積雪寒冷地における交通工学(積寒交通工学)を世界でいち早く提唱されました。冬期路面の摩擦係数を測定するためのすべり抵抗測定車の開発と冬期路面での摩擦係数の測定は北欧や北米各国に先駆けたものであり,世界的な評価を受けております。交通工学自体が未だ揺籃期にあった時代に,積雪寒冷地での交通工学の確立にご尽力されて来られた先生は,20年も30年も時代の先を行く先覚的な研究者であられました。
 同氏は,研究が実社会に生かされることを常に重要視されておられました。昭和50年代にスパイクタイヤが大きな社会問題になりましたが,交通事故増大等の大きな混乱もなく,社会的な合意の形成と実際の解決策の策定に指導的な役割を果たされました。また,北海道におけるドクターヘリ導入の重要性に着目し,その実現に尽力されました。
 昨今北海道の交通事故死者数はピーク時の4分の1近くまで減少するまでに至っておりますが,同氏は,一時期北海道の定番でありました「交通事故全国一」の汚名返上に大きな貢献をされてきました。こうした業績に対し,平成6年11月に,北海道新聞社より文化賞(科学技術賞),同18年7月には北海道警察功労表彰(金賞)を授与されておられます。
 平成7年3月に北海道大学を定年退職された後にも,北海道工業大学において引き続き教鞭をとられ,北海道における工業教育にご尽力されてきました。平成14年に同大学を定年された後にも,北海道総合開発・エネルギー問題道民会議理事長などを務められるなど,最後まで北海道のために最前線で活躍されてきました。
 以上のように同氏は,交通工学に関わる教育・研究を通して,北海道大学および同工学部,および同工学研究科の運営に寄与するだけでなくわが国の交通工学の発展に多大な貢献をされました。
 ここに,謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

(工学院・工学研究院・工学部)


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