総合博物館では,平成16年より,パラタクソノミスト(準分類学者)養成講座を開催しています。これは,学術標本やサンプルを正しく同定し,整理する能力を有し,環境調査・教育において必要とされる人材である「準分類学者(パラタクソノミスト)を養成することを目的としています。平成20年度後半より,北海道教育GP「博物館を舞台とした体験型全人教育の推進」のもとで実施されており,7月には,下記の日程で3つの講座が開催されました。
各講座には,多くの学生や市民が参加し,慣れない道具や専門用語に戸惑いながらも,講師の指導を受けて熱心に取り組んでいました。 |
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植物パラタクソノミスト養成講座(初級)
7月3日(土)と4日(日)に,当館資料部研究員の持田誠氏と当館教授の高橋英樹氏を講師とし,総合博物館で開催され,学生や市民ら11名が参加しました。
1日目の午前中の講義では,植物分類学の基礎的な知識の解説や,標本の意義等が説明されたほか,実際の標本が収められている標本庫も見学しました。午後からは,北海道大学構内のサクシュコトニ川周辺と原生林に出かけ,受講生が実際に野外での採集を行ないました。その後,採集した植物を持ち帰り,作製方法等の指導を受けながら,標本の作製を行ないました。
2日目は,まず,前日に作製した標本の吸水紙の交換作業を行い,標本庫の標本を利用して,同定の練習を行ないました。午後からは,前日に採集した標本の同定を行ない,種名の確定のために,標本庫の標本と比較しました。その後,違う標本を使って,標本を標本台紙に貼る作業が行われ,植物体とラベルが貼られた最終的な標本の完成までを行ないました。 |
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植物パラタクソノミスト養成講座(初級)で
同定実習に取り組む受講者 |
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植物パラタクソノミスト養成講座(中級:スゲ属植物)
7月10日(土)と11日(日)に,神奈川県立生命の星・地球博物館学芸員の勝山輝男氏を講師に迎え,総合博物館で開催され,11名の受講生が参加しました。
1日目は,まず,実物の植物を見ながらスゲ属植物の基礎的な構造についての講義があり,その後,午後からは,実物の植物を見ながら検索表の使い方の説明や,標本庫の標本を使って見分けにくい種類の解説が行なわれました。
2日目の午前は,石狩川の河川敷まで出かけ,湿原性のスゲ属植物についての解説を交えながら,採集・観察を行ないました。午後からは,石狩浜近郊で野外採集・観察をした後,博物館に戻り標本作製を行ないました。その後,採集したスゲ属植物と近縁な種類を比較しながら,見分けるポイントについて説明を受け,最後に,スゲ属植物の最新の知見についての解説が行なわれました。 |
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植物パラタクソノミスト養成講座
(中級:スゲ属植物)で説明をする勝山講師と受講者 |
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植物パラタクソノミスト養成講座(中級:水草)
7月17日(土)と18日(日)に,札幌市博物館活動センターの山崎真実氏を講師に迎え,総合博物館で開催され,11名が参加しました。
1日目は,総合博物館に集合後,すぐにバスに乗り込み,モエレ沼公園に向けて出発しました。講師から採集の仕方や同定に必要な部分を採るためのコツ,採集できる水草の種類,水草の生育型の違いなどの説明を受けた後,受講生はそれぞれ沼の岸や浅瀬で水草を採集しました。午後からは,総合博物館に戻り,各自が採った水草の仕分けを行ないました。種ごとに分けたあと,被子植物やイネ科植物のように丈夫なものは,通常の陸上植物と同じ要領で新聞紙に挟んでさく葉標本(押し葉標本)にしました。各標本紙の間に乾燥用の段ボールを挟み,その束を熱風循環式乾燥機に入れたところで,1日目の講義は終了しました。
2日目は,前日に作成して一晩熱風循環式乾燥機で乾燥させた標本と,押し葉にせずに保管していた生の植物を使い,水草の形態観察と同定の実習を行ないました。また,水草に特有の「殖芽」という,越冬するための形態を,講師が昨秋に採集したものを使って観察しました。
午後からも,引き続き,採集した水草の観察と同定を行い,オヒルムシロの花や葉(浮葉,沈水葉)の形態を観察し,検索表と図鑑を使って同定しました。実習終了後は,作成した半乾きのさく葉標本を持ち帰るための簡易野冊を段ボールで作り,さく葉標本を完成させるための乾燥方法を紹介しました。 |
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植物パラタクソノミスト養成講座(中級:水草)で
解説する山崎講師 |
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(総合博物館) |
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