北方生物圏フィールド科学センターでは,8月16日(月)から20日(金)までの4泊5日の日程で「野外シンポジウム2010〜森をしらべる〜」を開催しました。野外シンポジウムは,北海道大学が所有する広大な森林や渓流を巡りながら,野外研究の方法や成果を現場で学び,実際に行われた調査研究の一端を体験しながら,何がどこまで解明されたのか,そしてこれから何を明らかにする必要があるかについて考える場です。 |
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早朝の森で捕獲した野ネズミとの対面に
心をときめかせる |
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13回目となる今年の野外シンポジウムは,北海道北部の天塩研究林と中川研究林の森を舞台に開催しました。直前の集中豪雨で交通機関が不通になり,研究林内の林道も各所で崩壊するなど深刻な被害が発生しましたが,期間中は幸いにも快晴続きで,予定どおり実施することができました。シンポジウムには全国各地の国公私立大学から森林研究に興味を持つ学部学生16名が集まり,早朝から夜遅くまで野外を歩きながら,センターの教職員や大学院生たちから森林研究の最新の成果や研究の進め方について真剣に学びました。各プログラムは基本的に日中に野外研究の現場で行うフィールドセッションと,詳しい解説や質疑応答を中心とした夕食後の室内でのポスターセッションの二段構成になっています。テーマ別に用意された12のセッションの他,早朝の森林散策や夕食後のサテライトセッションなど盛りだくさんの内容で,学生たちはメモをとりながら懸命に取り組みました。 |
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自動撮影カメラを設置して,
野生動物の観察に挑戦 |
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野外のセッションでは,真っ暗闇の森の中を歩いたり,地上20mの足場タワーに登って真上からの林冠観察や,地中に埋設したチューブにカメラを入れる土壌や根系の観察,両生類の形態変化や渓流の底生生物の捕獲調査,採取したばかりの葉っぱの葉緑素分析などダイナミックな野外での調査を存分に楽しみました。また,夜のポスターセッションでは,現場で経験した共有の感覚をベースに掘り下げた議論を行いました。時間を惜しむように活発な質疑応答が繰り広げられ,研究の楽しさや難しさのほか,研究者たちの苦労話や試行錯誤の裏話などを聞く良い機会となり,毎日夜遅くまで楽しい交流の時間が続きました。 |
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地上20mの林冠アクセスタワーに上り,
真上から森をみる |
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全てのセッション終了後に行われた参加学生による模擬セッションでは,研究者になったつもりでテーマを考え,実験結果までを予想して発表しました。学生たちの中でふくらんだ「森林研究」への思いが伝わるユニークで楽しい発表会となりました。 |
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現場での説明や調査についての経験を
共有した上で,夜遅くまで議論した |
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最終日のエクスカーションでは天塩川をカヌーで下りながら,オジロワシの観察や外来種ウチダザリガニの捕獲計測を行い,生態系の攪乱や生物多様性の保全について考えました。 |
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研究者になりきってポスター発表に挑戦人に
伝えることの楽しさと難しさを実感 |
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参加した学生たちは「参加してよかった」,「他の人の考えを聞き,自分とは異なった視点の考え方を学んだ」,「研究者たちの生の声を聞けてとても勉強になった」,「どんな質問にも丁寧に答えてもらえて満足」,「サンショウウオの変身が印象的だった」など,様々な思いを抱いて今年の野外シンポジウムを終えました。
本事業は(社)国土緑化推進機構「緑と水の森林基金」の助成を受けて実施しました。 |
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天塩川の悠久の流れに乗って北海道命名の地へ |
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セッッションのテーマとタイトル
1.ようこそ闇夜の森へ
野ネズミたちのドングリ晩餐会〜あせらず,ゆっくり食べましょう〜
2.緑の森と地球環境
森と大気のはざまで〜偉大なる葉っぱの役割〜
森と大地のはざまで〜忘れちゃならねぇ根っこの心〜
3.生き抜くための工夫
食うために,食われぬために〜サンショウウオとアカガエルの変身術〜
洪水が川の生き物を決める〜攪乱とベントスの機能〜
4.葉っぱが語る森の生業
森から昆虫が消える日!
葉っぱ元気かしょげてるか?〜光で森の健康診断〜
5.北方林の断章
よい伐採って何だろう?〜40年前の森を想像しながら考える〜
森林の百年先は予測できるか?
地球上の最大生物から学ぼう
6.サテライトセッション(森の語り部)
飛んで灯に入る夏の虫
森が海を育てるってホント?
早朝散策(森の散歩道)
出会いはいつも森の中〜ネズミウォッチング〜
ヒグマを狙え〜自動カメラで動物撮影〜
耳をすませば〜野鳥ウォッチング〜
エクスカーション
遥かなる時空を越えて〜北海道命名の地へ〜 |
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(北方生物圏フィールド科学センター) |
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