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電子科学研究所 竹内繁樹教授らが大和エイドリアン賞を受賞

 電子科学研究所 竹内繁樹教授が,英国ブリストル大学 オブライアン・ジェレミー(Jeremy O’Brien)教授と共同で研究を行った「光子を用いた量子情報科学技術-ミクロな領域を支配する基本物理原理である量子力学を利用した新技術の開発」の功績により,第7回大和エイドリアン賞を受賞されました。
 本賞は,英国王立協会のフェローからなる審査委員会の選考により,3年に一度,日本と英国のグループによる顕著な共同研究業績に対して贈られます。
 今回は,本共同研究を含む6件の日英間共同研究チームに対し,2010年12月2日にロンドンの英国王立協会において授与されました。
 受賞にあたっての同氏の功績等を紹介します。

 
略 歴 等
平成3年3月 京都大学理学部卒
平成5年3月 京都大学大学院理学研究科修士課程修了
平成5年4月 三菱電機中央研究所(後に先端技術総合研究所に改組)研究員
平成11年10月 北海道大学電子科学研究所講師
平成12年7月 博士(理学)(京都大学)
平成12年9月 北海道大学電子科学研究所助教授
平成19年6月 北海道大学電子科学研究所教授
 
英国王立協会での授賞式左から竹内教授,エイドリアン卿夫人,オブライアン教授
英国王立協会での授賞式
左から竹内教授,エイドリアン卿夫人,オブライアン教授
 
功 績 等
 物質の基本要素である原子や,光の最小単位である光子などのミクロの世界は,「量子力学」という,通常私たちが経験する古典力学とは異なる物理法則によって支配されています。今回受賞の対象となった量子力学を利用した新技術の開発では,この量子力学の性質を利用することで,現在のコンピュータでは時間がかかりすぎて解けない問題を解ける「量子コンピュータ」や,物理法則に基づいて通信の安全性を保証する「量子暗号」,さらに,「古典理論」の限界を大きく超える「量子計測」などを実現することが期待されています。
 竹内教授らとオブライアン教授らは,光子を一粒ずつ操る「光量子ゲート」素子を開発,それらを組み合わせることで,量子もつれ合いを抽出する世界最大級の「光量子回路」を2009年に実現しました(Okamoto et. al., Science 323, 483 (2009))。また,4つのもつれ合った光子を用いた干渉装置により,光位相測定の標準量子限界(古典理論による限界)を超えることに2007年に成功(Nagata et. al., Science 316, 726 (2007)),この研究は,将来の超高感度光センサーの開発につながる成果として,米国科学雑誌サイエンティフィックアメリカン(日本版名:日経サイエンス)により,2007年の世界ベスト50研究に選ばれています。
 竹内教授は,海外研究開発動向調査に係わる調査研究として2001年豪州クィーンズランド大学に2ヶ月間短期滞在した時にオブライアン教授と知り合い,以来親交を深めました。オブライアン教授は,日本学術振興会による研究者招聘制度や,大和日英基金の支援などで,6ヶ月間の滞在を含め多数回本学に来学,共同研究を発展させました。オブライアン教授は2006年にブリストル大学に異動,現在はヨーロッパを代表する量子情報科学技術の研究者であり,現在ブリストル大学量子フォトニクスセンターのセンター長を務めています。
 今回の受賞は,本共同研究のさらなる飛躍に繋がるとともに,本学のブリストル大学を初めとする英国科学界との交流の深化と発展の機会となると期待されます。
 
(電子科学研究所)
 

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