名誉教授早川泰正氏は,平成22年12月26日肺炎のため逝去されました。ここに,同氏の生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
同氏は,大正7年1月21日札幌市に生まれ,昭和16年12月東京商科大学を卒業し,内閣企画院事務嘱託,東亜経済研究所研究員等を経て,同22年7月北海道大学法文学部講師に採用されました。その後,同年11月助教授,同32年11月経済学部教授に昇任され,同56年4月1日停年により退職し,同月北海道大学名誉教授の称号を授与されました。
同氏は北海道大学に講師として赴任以後,昭和56年4月1日をもって停年退職されるまで,34年にわたり,経済変動論,経済成長論およびこれら理論の日本経済への応用の研究に従事され,特に経済変動論の研究においては,わが国を代表する研究者として学界をリードされました。また,教育面においては一貫して経済原論を講じて学部学生及び大学院学生の教育と研究指導に当たり,幾多の優れた人材を社会に送り出されました。
同氏が昭和26年に出版された著書「経済変動理論への途」は,当時の学界の最先端であったミクロ経済分析の主要問題である安定条件論,アグリゲーションの問題,新厚生経済学等を跡づけ,更に同人の問題意識である経済変動の長期傾向的法則を究明するという課題を設定し,巨視的動態理論の最先端分野をとりあげ分析検討を進めたうえで,経済変動と長期趨勢との相互作用についての理論展開を行われました。昭和33年に「経済変動理論」を刊行され,この書物で同人は,自分自身の経済変動についての理論モデルを積極的に提示し,学界の高い評価を受けました。この書物は過剰投資理論の論理を更に発展させたかたちで早川モデルと学界で呼ばれることとなった新しいモデルを展開されました。同氏は,更にこのモデルの日本経済への応用を試み,昭和47年「戦後日本経済と景気理論」を公刊され,ここでも過剰投資理論の考え方を一貫させて日本の景気循環を説明しようとしました。この他にも経済変動と成長に関する多くの論文を公刊され,多数の研究成果を挙げ,多大なる功績を残されました。
学内においては,学部学生並びに大学院学生の教育研究に専心するとともに,昭和38年8月から2年間,評議員として全学の運営の枢機に参画され,また同40年4月から2年間経済学部長,大学院経済学研究科長として学部運営の重責を担われました。更に昭和48年10月から4年間附属図書館長として,図書館の整備,運営に尽力されました。
学外においては,昭和43年から停年退官する同56年までの間,北海道総合開発委員会委員,北海道地方最低賃金審議会委員,北海道地方労働委員会公益委員,札幌市長期総合計画委員会委員,北海道開発庁の諮問機関である北海道開発審議会委員,日本国有鉄道北海道総局評議会評議員を歴任され,北海道の開発及び産業界の発展のために貢献されました。
北海道大学退職後は,千葉商科大学教授として,引き続き人材の育成に貢献され,昭和58年4月から4年間同大学付属図書館長,同62年4月から平成7年3月まで同大学学長(千葉短期大学学長兼務)に就任され,同時に学校法人千葉学園の理事,評議員を務められました。
以上のように,同氏は研究者として優れた業績を挙げられ,学術の振興に貢献されたほか,教育者としても優秀な人材を数多く世に送り出され,我が国の高等教育ならびに学術の発展に大きく貢献されました。これらの功績により,平成6年4月には勲二瑞宝章が授与されました。
ここに,謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
(経済学研究科・経済学部)
|