5月の毎週月曜日と金曜日に,毎年恒例のスラブ研究センターの公開講座が開催されました。今年度は,人間の移動をキーワードに,ロシア人をはじめとして,ユダヤ人,ドイツ人,アルメニア人,タタール人,中国人,そして日本人を対等なロシア史の主人公として語ることで,私たちが広大なロシアの多様な顔の一つしか見ていないことを確認していただくことを目指しました。
ロシアの歴史は,ロシア人だけが広大な空間を占有すべく動いていたのではありません。過去500年,ユーラシア大陸の中心部で国家を建設する中でロシア人は,様々な移動する民族に遭遇し,彼らに頼り,ある時には競合してきました。また,周辺の民族もロシア人の作り出した空間に躍動の機会を見出してきました。さらに,これらの人々は様々な理由で国境を越え,個々の経験に基づく様々なロシア像を世界各地に広めてきました。
今回は,90名ほどの参加者がありました。講義の最後に行われた質疑応答では,専門家の間でも論争的なテーマのほか,日本人が今後,ロシアとどのように付き合っていくべきかを含めた内容の濃い議論が展開されました。参加していただいた皆様と講師の先生方に深くお礼申し上げます。
スラブ研究センターでは,平成20年度より「ユーラシア地域大国の比較研究」という大型プロジェクトが文部科学省の資金(新学術領域研究)で進行しております。今回は,その第5班「国家の輪郭と越境」との共催で行われました。
 |
 |
講義の様子 |
熱心に聞き入る受講者 |
(スラブ研究センター)
|