訃報

名誉教授  むら まもる 氏 (享年68歳)

名誉教授 田村(たむら) 守(まもる) 氏

 名誉教授 田村 守氏は,平成23年8月7日にご逝去されました。ここに,生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,昭和41年3月北海道大学理学部化学科卒業,同43年3月同大学大学院理学研究科化学専攻修士課程修了,同46年3月同専攻博士課程を修了し,理学博士を取得されました。その後,ペンシルバニア大学The Johnson Research FoundationのBritton Chance博士のもとで博士研究員,昭和49年9月大阪大学産業科学研究所助手,同53年4月北海道大学応用電気研究所助教授を経て,同63年12月同教授に昇任し,平成4年4月北海道大学電子科学研究所教授,同18年4月同大学大学院先端生命科学研究院教授に配置換えとなり,同19年3月31日定年により退職され,同年4月に名誉教授の称号を授与されました。
 同氏は,北海道大学応用電気研究所及び電子科学研究所で主に生体分光学の先駆的研究を行い,特に光を使った無侵襲生体計測技術の開発と,主として臓器還流法を用いた生体系の酸素代謝の研究を行って来ました。同氏の研究は特に,生体分子を対象とした分光学,特に近赤外領域における光の吸収,発光,散乱等に着目し,新しい概念と独創的発想に基づく,生体分子の機能の解析手法を開発するとともに,それらの方法論を分子レベルから人の生体機能,特に脳の高次機能まで幅広い研究対象に展開し,基礎科学のみならず,応用,特に臨床分野への発展に貢献したことにあります。多彩な研究業績の中で特筆されるのは,近赤外光を中心とした脳酸素モニターの開発及び世界に先駆けて作られた光CT装置が挙げられます。また,臨床応用を目指した蛍光内視鏡の開発や無侵襲血糖計測法の開発にも大きな貢献があります。
 また,同氏は長年にわたって,生体分光学の研究・教育に努めてきました。大学初年次の基礎教育から大学院の専門教育にわたって,多くの学生の教育と育成に尽力するとともに,博士論文の研究・執筆指導を務めてきました。十数名に及ぶ博士論文等の指導を行い,それらの卒業生及び修了生は各分野で指導的役割を果たす人材となっています。
 同氏は上記の研究活動と共に,本学内外の諸活動において,数々の貢献をされました。特に,医用近赤外分光法研究会会長,酸素ダイナミクス研究会会長,生物物理学会理事,(財)伊藤医薬学術交流財団選考委員,(財)光産業技術振興協会バイオフォトニクスブレークスルー技術委員,を歴任しました。また海外では,NIH: Visiting Professor,英国Fellow of The Institute of Physics, ISOTT2008名誉会長として活動,また,平成18年10月より,日本大学医学部客員教授と(独)沖縄科学技術研究基盤整備機構特別顧問,理化学研究所客員主管研究員等として,分子イメージング関連の研究を担当しました。平成19年3月の本学退職後は,平成20年から中国 清華大学医学部の高級訪問教授として活躍していました。
 ここに,謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

(先端生命科学研究院)


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