先端生命科学研究院では,9月22日(木)午後4時より学術交流会館小講堂において,1988年ノーベル化学賞受賞者のJohann Deisenhofer博士をお招きし,本学の教員・博士研究員・大学院生・学部生を対象とした「ノーベル化学賞受賞者特別講演会」を開催しました。(世話人:先端生命科学研究院 教授 田中 勲)
Johann Deisenhofer博士は1943年に西ドイツに生まれ,1974年ミュンヘン工科大学で博士号を取得,その後1974年から1988年まで,ミュンヘンのマックスプランク生化学研究所で研究に従事,1984年に光合成細菌の持つタンパク質複合体(光反応中心)の3次元構造解析に成功しました。これは膜タンパク質として世界初の構造解析例です。Deisenhofer博士は,この業績によりHartmut Michel博士,Robert Huber博士と共に,1988年のノーベル化学賞を受賞されました。
膜タンパク質の構造解析は今日でも極めて困難で,成功例は数えるほどしかありません。この膜タンパク質の最初の構造がNature誌に発表されたのは1984年のことで,それからわずか4年後の1988年にノーベル賞を受賞されたのですから,当時,この成果が研究者たちの間でいかに注目されたかが想像できるかと思います。
Deisenhofer博士は,その後アメリカに渡り,ハワードヒューズ医学研究所で研究に従事,テキサス大学サウスウエスタン医学センターの教授に就任された後も,チトクロームbc1 complex,mitochondrial processing peptidase,鉄輸送トランスポーター,LDL受容体など,構造生物学分野で数々の成果を挙げておられ,現在に至ります。
今回,平成23年度日本学術振興会外国人著名研究者招へい事業(受入機関 京都大学,代表 三木邦夫教授)によりご来日されたのを機に,本学でのご講演をお願いし,この特別講演会が実現しました。
本講演会では“STRUCTURAL BIOLOGY:CHALLENGES AND PROSPECTS”のタイトルで,構造生物学の課題と展望について,学部生や専門外の方にもわかりやすくご講演いただきました。
講演の後には教員はもちろん,学生からも熱心な質問が次々と寄せられました。Deisenhofer博士は,そのすべてに真摯に,時にはユーモアを交えながらお答えになり,会場は終始和やかな雰囲気でした。1時間半という短い時間ではありましたが,本学の,特に若手研究者が,ノーベル賞受賞者から直接の講義を通じて,その分野の学問の重要性を認識し,また,科学の諸分野に対する理解を深められた素晴らしい講演会でした。
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Johann Deisenhofer博士 |
講演会の様子 |
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真剣な面持ちで聴講する参加者 |
(生命科学院・先端生命科学研究院)
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