経済学部では,札幌国税局長の橋本元秀氏による特別講演会を11月14日(月)午前10時30分より学術交流会館小講堂において開催しました。特別講演会のタイトルは「社会経済と税制・税務行政の関連−歴史的視点から−」で,社会経済状況に応じた税制と税務行政の在り方についてご講演いただきました。
講演者である橋本氏は,大蔵省金融局,金融庁,国税庁で勤務され,特に,国税庁では査察課長を務められた経験があります。まず,税制については,日本の社会経済状況の変化に応じて,国の税制が歴史的にどのように変遷してきたかについて語っていただきました。農業を中心とした明治時代には,土地と酒という「物」を課税対象とする地租と酒税が中心でしたが,その後,「所得」という概念を課税対象とする所得税の時代に移り,さらにサービス業が多い現代では,消費全般に広く薄く負担を求める消費税が導入されています。課税方法も時代に応じて変わり,例えば,酒税に対する課税方法は,免許税から生産量に応じて課税する造石高に移行し,さらに酒蔵からの移出量に応じて課税する庫出税に変わってきた過程を説明されました。次に,税務行政については,国税庁の組織と税務行政の現状について語っていただきました。特に,査察調査については,橋本氏の実際の体験を踏まえた興味深い話を聞くことができました。
講演会には多数の出席者があり,経済学部の学生と大学院生ばかりでなく,他学部の学生や一般の方の参加もありました。当日,参加者にアンケートを配布したところ,参加者の多くから橋本氏の講演が非常に有益であった旨の回答がありました。
歴史的な視点から社会経済状況に応じた税制の在り方を考えるということは,参加者の税に対する理解を深めるだけではなく,参加者一人ひとりが現在の社会経済の中でどのような税が本当に望ましいのかを自分自身で考える機会になると思われます。現在,我が国は深刻な財政危機に直面しています。国の増税に対して国民の十分な理解が得られないため,十分な税収を確保できず,財政が維持できない状況にあります。国民が税に関心をもち,税の理解を通して社会的に参加し,真剣に社会全体として持続可能な制度を考えていく必要があります。
このような講演会が,学生にとって現実の経済問題に興味をもち,真剣に社会の在り方を考えるよい機会になることを期待します。
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講演する札幌国税局長 橋本氏 |
質疑応答の様子 |
(経済学研究科・経済学部)
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