10月24日(水),大学文書館は,秋間美江子氏から,宮澤弘幸旧蔵アルバムの寄贈を受けました。秋間美江子氏は宮澤弘幸のご令妹です。当日,ご同伴の山野井孝有氏,山本玉樹氏と来館された秋間氏は,新田孝彦大学文書館長(理事・副学長),白木沢旭児大学文書館副館長(文学研究科教授)に直接,アルバムをお渡しくださいました。
宮澤弘幸は1919(大正8)年東京に生まれ,1937(昭和12)年4月,北海道帝国大学予科工類に入学し,1940年4月に工学部電気工学科に進学しました。在学中は,登山,スキー,旅行,満鉄の調査団への応募参加,海軍の軍艦便乗など,行動力に溢れた活動を続けました。また,英語教師のレーン夫妻やドイツ語教師ヘッカー,イタリア人留学生マライーニなどと深い親交を結びました。
しかし,アジア・太平洋戦争開戦の1941年12月8日,工学部2年生であった宮澤弘幸は,レーン夫妻とともに軍機保護法違犯すなわちスパイ容疑で逮捕され,1943年5月に宮澤の懲役15年が確定しました。いわゆる宮澤・レーン事件です。宮澤弘幸はGHQの指令で釈放される1945年10月まで服役し,苛酷な拘禁生活がもとで1947年2月に逝去しました。
その後,弁護士上田誠吉(1926-2009年)が,『戦争と国家秘密法』(イクォリティ,1986年),『ある北大生の受難』(朝日新聞社,1987年),『人間の絆を求めて』(花伝社,1988年)などの著書で,宮澤・レーン事件の全貌を解明し,宮澤弘幸が冤罪であったことを明らかにしています。
この度,ご恵贈いただいた宮澤弘幸旧蔵アルバムは,宮澤自身が,予科修了を記念し,1937年4月から3年間の予科在学時代の自身の足跡を,写真を中心に絵葉書・チラシや自筆の地図・挿絵を交えて,達筆な文字で詳細な解説文を添えて編集したものです。アルバムは,宮澤の好奇心旺盛な人柄とともに,当時の予科生の学生生活を生き生きと記録した大変貴重な資料です。
秋間氏はアルバムを寄贈される際,宮澤弘幸が北大を退学処分となっていることに言及され,また,事件後にご家族・ご遺族として辛い思いを抱かれ続けたことをお話しくださいました。大学文書館では,こうした秋間氏のご心情を大切に受け止め,寄贈資料を所蔵してまいります。また,昨秋受贈した上田誠吉旧蔵資料とともに閲覧公開・展示等を通じて広く紹介し,本学の歴史の中に宮澤・レーン事件をしっかりと位置づけてまいりたいと考えています。