スラブ研究センターと国際法研究会(法学研究科)は山本忠通駐ハンガリー日本大使(元アフガニスタン・パキスタン支援担当特命全権大使)を講師に迎え,2月22日(金)午前9時30分からスラブ研究センター大会議室において,「平和構築と紛争後の復興と国家建設:日本の貢献−カンボジアとアフガニスタンの例−」と題する研究会を開催しました。悪天候,早朝にもかかわらず,学内外から50名近い参加者が集まりました。講演の基調は,平和構築の基礎は信義にあるというメッセージでした。
講演内容の第一は,「平和構築と復興の諸段階」についてで,和平プロセスの初期には軍事力が不可欠だが,復興プロセスにおいては,軍事介入した国は総じて当事国との間で信頼醸成が困難であることが述べられました。山本氏が実務外交官として係わったカンボジアとアフガニスタンの例でも,復興への関与で軍事力を行使しなかった日本に対する当事国と国際社会の期待が大きかったとのことです。
第二は平和外交における国内的支持の重要性です。アフガニスタン及びカンボジアの両事例で,日本外交は国際的に高い評価を得ました。しかし,カンボジア和平での高い国内的支持に比べ,アフガニスタンについては東日本大震災が生じたこともあり,国内支持が後退し厳しい局面もあったとのことです。
第三は平和構築と国益の関連です。現在,日本でも外交において短期的な国益を優先させる傾向がみられ,それは世界的にも強くなっています。しかし目先の国益よりも国際的な大義や地域の安定を優先させることこそが大国に求められるべきです。日本はカンボジアとアフガニスタンでの平和構築においてまさにそうした理念に従ったからこそ,和平が達成されたと山本氏は述べました。
第四は平和外交における人的資源の問題です。平和構築と復興には数多くの多岐にわたる優れた人材が不可欠であるが,日本にはそうした人的資源が備わっていると山本氏は指摘します。その上で教育が重要だと説きました。今日の大学は「グローバル人材」の育成をこぞって掲げています。折しも,本学では平成25年度から新渡戸カレッジとして文部科学省のグローバル人材養成プログラムを始めるところです。
山本氏の講演は,グローバル人材とは何かを実践的に示す好例であり,今後,人材育成プログラムを発展させるうえで,多くの貴重な示唆を与えるものでした。