訃報 教授 陽  完治(よう かんじ) 氏 (享年63歳)
訃報

教授 陽  完治 (よう かんじ) 氏 (享年63歳)

陽  完治 氏  名誉教授 教授 陽 完治氏は,平成25年10月30日に逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 同氏は,昭和49年3月に早稲田大学理工学部応用物理学科を卒業し,同年4月に日立製作所および日立研究所にて半導体デバイス,集積回路に関する研究開発に従事されました。その後,米国スタンフォード大学において学位を取得し,平成元年4月から平成6年3月まで,大阪工業大学電気工学科講師(後に助教授)に任用されました。平成6年4月に,北海道大学量子界面エレクトロニクス研究センター教授に採用され,平成13年4月に量子集積エレクトロニクス研究センター教授に着任しました。
 研究面においては,III-V族化合物半導体(注1)超高速ヘテロ接合トランジスタの研究をはじめとし,半導体極微細構造の電子輸送の研究,狭ギャップ半導体(注2)中のスピン(注3)依存電子輸送の研究,さらにグラフェン単分子膜(注4)の形成と応用の研究に取り組み,多大な成果を収められました。とりわけ,スピントロニクス(注5)研究においては,強磁性体/半導体界面におけるスピン注入効率の大幅な向上を達成するなど,この分野の発展に大きく貢献されました。これらの功績は高く評価されると同時に,大型研究プロジェクトの審査および評価委員を務めるなど,我が国の科学技術の発展にも寄与されました。
 教育面においては,北海道大学工学部,工学研究科及び情報科学研究科において専門科目を担当するとともに,全学共通科目を通して多くの学生の教育にあたりました。研究室に配属された学部生,大学院生に対しては,最先端の研究論文を直接指導し,産学界に多くの人材を輩出されました。
 このように,同氏は,電子電気材料工学分野において,教育活動,研究活動に尽力されるとともに,学術振興,人材育成に多大な貢献をされました。
 ここに謹んで先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

  注1)III族元素とV族元素を用いた半導体。
注2)禁制帯幅の狭い半導体材料。一般的に,電子の有効質量が小さく,電子速度が速い。
注3)電子の内部状態のひとつであり,材料の磁性に関連する。
注4)1原子層の厚さの炭素シート。
注5)スピンとエレクトロニクスから生まれた造語。電子の電荷とスピンの両方を工学的に応用する分野。

(量子集積エレクトロニクス研究センター)

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