海外から参加の大学院生15名を含む140名余が参加した初日のシンポジウムは,山口佳三総長の冒頭挨拶から英語でスタートしました。“Ambition Across the Disciplines(大志は専門分野を超えて)”というテーマに基づいて,フランス・ストラスブール大学のElena R. Savinova教授,国立台湾大学のWen-Chang Chen教授,Jye-Shane Yang教授,シンガポール国立大学のJun Li教授らが,学術分野を超えた視野で世界の最新研究を紹介し,理想とするリーダー像をリーディング生に伝えました。それに応じる形で本学からは黒田紘敏特任准教授(ALP),越崎直人教授(工学研究院),中島 祐助教(先端生命科学研究院),梅澤大樹准教授(地球環境科学研究院)が数理連携と物質科学の研究成果を論じました。ディスカッションでは学院の枠を超えた5つの専攻が参加する本プログラムならではの多様な切り口での議論が展開され,リーディング生からの問いに講演者が窮する場面も見られました。
夕方からは定山渓温泉に移動し,ポスターセッションとワークショップを開催しました。リーディング生と海外から参加した大学院生の交流の場も兼ねたポスターセッションは,参加者全員での会場設営から和気あいあいとした雰囲気に包まれ,予定を大幅にすぎて真夜中まで続きました。翌日は朝から,英語でディスカッションするPBL(課題解決型学習)型ワークショップを開き,映画「ミクロの決死圏」を題材にALP教員のファシリテーションで科学技術の社会への適用のあり方について多様な議論を戦わせました。最後は藤吉隆雄特任准教授(ALP)による“ミクロの決死圏の原案は鉄腕アトムだった”とのミニレクチャーを実施し,互いの文化の影響やグローバルな権利ビジネスの問題を考える契機となりました。
これらの取り組みは,専門力の深化にとどまらず,科学技術倫理,文化の多様性への理解など,物質科学のグローバルリーダーたる素養を獲得するために役立ったことと思います。このシンポジウムの実現に向けて教員陣はファシリテーション研修に取り組むなどし,周到な準備を目指しました。新たな発想による効果的な大学院教育プログラムの開発を,本プログラムではこれからも進めていきます。
総合化学院総合化学専攻,生命科学院生命科学専攻,環境科学院環境物質科学専攻,理学院数学専攻,工学院量子理工学専攻に所属する大学院生を対象とする5年一貫の大学院教育プログラム。