12月5日(金)に,第12回脳科学研究教育センターシンポジウム「認知のダイナミクス〜認知システムの動態を探る〜」(世話人代表:文学研究科特任教授 菱谷晋介)を医学部学友会館フラテホールで開催しました。脳科学研究教育センターには医学,薬学,理学,工学,保健科学,文学,教育学など学内15部局の約30名が基幹教員として参加しており,脳科学研究の推進と,大学院講義,実習,合宿研修などを柱とした教育活動を行っています。また,毎年,学内外の脳科学研究者が参加するシンポジウムを開催しています。
今回のシンポジウムは, 高次脳機能の可塑性についての理解を深めるべく,認知研究の中心的テーマの一つである認知の柔軟性をテーマにして,その神経基盤に関する基礎研究から,医療や社会における応用研究に至るまでの,幅広い分野での研究について講演が行われました。
吉岡充弘センター長(医学研究科)による挨拶とセンターの紹介に続き,安田和則理事・副学長からの挨拶後,セッションを開始しました。セッション1「認知スキルの熟達・個人差」では,川端康弘教授(文学研究科)から認知スキルの熟達によって色彩認知が変動する可能性について,箱田裕司教授(京都女子大学発達教育学部)からは安定した個人の認知的特性と考えられていた認知スタイルが,より可塑的な認知のモードという観点から把握可能であることについて,それぞれ最新の研究成果が紹介されました。セッション2「状況による認知の変動」では,仲真紀子教授(文学研究科)が司法面接場面における子どもの証言に関する研究について,池田文人准教授(高等教育推進機構/理学研究院)が思い込みとその解消に伴う認知の変化に関して,コンピュータによる支援システムやその利用も交えた研究について講演しました。セッション3「発達に伴う認知システムの変化」では,友田明美教授(福井大学子どものこころの発達研究センター)から,児童期の虐待が引き起こす脳構造の変化に関する研究成果と被虐待児への対応が紹介され,乾 敏郎教授(京都大学大学院情報学研究科)からは,高次認知機構とその発達に関する脳科学的研究の最新の成果と知見が紹介されました。最後に,渡辺雅彦副センター長(医学研究科)の挨拶があり活況のうちに閉会となりました。
学内の各部局や道内外の他大学などの研究者・学生等,195名の参加があり,多部局からなる脳科学研究教育センターの特色を活かした,幅広い分野の研究や応用への広がりを実感できる「認知のダイナミクス」というテーマの下で,活発な質疑応答がなされました。今回のシンポジウムが参加者の皆様の興味を満たすとともに,学内外の研究の新しい展開につながっていくことを願っています。
◆脳科学研究教育センターホームページ
http://www.hokudai.ac.jp/recbs/