役員便り ※今号は,特定事項(男女共同参画)を担当する役員以外の副学長である望月恒子教授に寄稿していただきました。
男女共同参画と女性研究者支援の推進を目指して
副学長 望月 恒子 (もちづき つねこ)
昨年4月に男女共同参画担当の副学長に就任しました。同時に,人材育成本部長及び女性研究者支援室長という2つの役職にも就いて,早くも1年近くが経とうとしています。仕事の内容や自分の役目を理解して,すでに予定されていたプロジェクトなどを責任をもって実施するのに精一杯で,担当業務の全体を見回す余裕はありませんでした。今ようやく全貌が見えてきて,課題は何か,その解決に向けて何をすべきかを具体的に考え始めたところです。
人材育成本部では,従来からの上級人材育成ステーションと女性研究者支援室に加えて,昨年12月に連携型博士研究人材育成推進室を立ち上げて,3事業部門体制になりました。人材育成ステーションと推進室では,他大学との連携も含めて,若手研究者のキャリアパス多様化に向けて積極的な活動を行っています。その活動は非常に多岐にわたりますので,今回は女性研究者支援室と,男女共同参画推進についてのご報告に留めたいと思います。
女性研究者支援室について
女性研究者支援室は平成18年7月に開設されました。日本では大学教員における女性の割合が低く,特に理工系分野でそれが顕著です。この状況を是正するために,文部科学省は平成18年から次々にプログラムの公募を行い,本学はそれに応募して採択されてきました。平成18〜20年度女性研究者支援モデル育成事業,21〜25年度女性研究者養成システム改革加速事業,そして25〜27年度は拠点型の女性研究者研究活動支援事業(本学のノウハウを道内の大学・企業等の連携機関と共有する)を実施しています。本学ではこれらのプログラムに加えて,ポジティブアクション北大方式*や,学内保育施設の充実,育児中の女性研究者への研究補助者の配置などの環境整備を行い,支援室が中核となってそれらを実施してきました。
女性研究者・教員比率について
本学の全研究者中の女性の比率を2020年までに20%に引き上げようという数値目標[“20% by 2020”(Triple Twenties計画)]は,今では全学的な目標として認められています。本学ではこの10年間,女性の研究者も教員も,右肩上がりで増えつつありますが,その伸びは大いに順調とはいえない現状です。数だけが重要なわけではありませんが,私はこの1年を振り返って,あらためて「まずは女性教員の増加を目指したい」と,切実に思っています。本学の正規教員の中で女性の教授がいかに少ないか(本年1月1日現在34人。男性教授689人。女性比率4.7%)を見るとき,これでは,大学における男女共同参画はおぼつかないと考えるからです。博士学位取得者の約3割が女性であることや,講師・助教の女性は近年大幅に増加していることを思うと,彼女たちが自由に進路を選び,それが継続できる環境を作りたいと思わずにはいられません。女性研究者支援のために,従来の施策を継続しつつ,さらに効果的な方法を検討し,実行に移したいと思います。
最後に,本学における男女共同参画推進の体制について,ひと言述べておきます。本学では平成16年度に男女共同参画委員会が設置されました。研究科・研究院,研究所等の組織の長で構成するトップレベルの委員会です。この委員会のもとに企画調査専門委員会が置かれ,専門的な調査と企画に当たることになっています。実はこの体制が, 10年以上を経て少々機能しにくくなっているのではないかと,私は危惧しています。担当の副学長がひとりいるだけでは事は進みませんし,女性研究者支援事業との差異化も考える必要があります。これまでの経験を生かし,学内の多くの方々の意見を聞き,他大学や社会の動きも見ながら,男女共同参画事業を進めてまいりたいと思います。皆様のご協力をお願いいたします。
*ポジティブアクション北大方式
新たに女性教員を採用した場合,各部局が負担する人件費ポイントの2分の1を補填するシステム。