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経済学研究科でセミナー「北海道ブランドの企業経営をきく」を開催

記念撮影

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講演を熱心に聴く参加者

講演を熱心に聴く参加者

 経済学研究科では,小樽の田中酒造株式会社代表取締役の田中一良氏によるセミナー「北海道ブランドの企業経営をきく―小樽田中酒造社長を招いて」を,7月9日(木)午後2時30分〜4時30分,人文・社会科学総合教育研究棟W103教室において開催しました。同セミナーには,台湾の朝陽科技大学から日本の経営を学ぶために来札していた30名ほどの大学院生も参加し,本研究科の王 磊助教が通訳を担当しました。
 講演者である田中氏は,大学卒業後,銀行で国際金融業務を担当されていましたが,お父様の急死に伴い,田中酒造の経営を引き継ぎました。1899年に創業した同社は,今年で116年目を迎え,田中氏は4代目です。講演では,日本酒産業の問題点と田中酒造の対応についてお話しいただきました。
 日本酒の出荷量は,1973年をピークに激減し,2013年にはその3分の1にまで下がっています。最近では日本酒が海外で人気のアルコールになりつつあると聞きますが,輸出量の割合は全体の3%以下で,厳しい経営環境下にあります。そうした中で,田中酒造では1988年から,工場と店舗を観光施設化し,「地酒」として小樽でのみ販売する,日本酒と観光業を融合させた「観光造り酒屋事業」を開始しました。当時はメーカーが直接売るというのは業界慣行に反した試みでしたが,外国人観光客の増加とともに,販売実績を上げるようになりました。欧米からの観光客は,試飲するのみで購入しない傾向にありますが,東アジア諸国には「お土産文化」があり,お酒をお土産として購入する観光客が多くいます。現在,小樽には年間745万人の観光客が訪れ,そのうち15%にあたる約110万人は外国人と推計されています。こうした客層をターゲットにして販売する他,田中酒造では台湾など諸外国への輸出も行っています。日本酒産業全体としては後継者問題があり,全体で約1,000社ある中で,後継者問題(及び国際化への対応)を解決して存続しうるのは300〜500社程度ではないか,また,国内における過当競争が続くなか,例えばフランスの「ボジョレ・ヌーボー」のように,メーカーを問わず場所柄をブランド化して,「北海道のお酒」を販売することはできないか検討中とのお話もありました。
 様々な興味深いお話をお伺いすることができ,質疑応答においても台湾の大学院生から多くの質問と提案があり,充実した議論が展開されました。セミナーには約60名の参加があり,アンケートの集計から得られた反応はおおむね良好で,講演者の温かい人柄に対する高い評価と,講演内容に関する高い満足度を示すものでした。

(経済学研究科・経済学部)

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