訃報

名誉教授 寺沢 浩一(てらざわ こういち) 氏(享年63歳)

寺沢 浩一  氏  名誉教授 寺沢浩一氏は平成27年9月4日に逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 先生は昭和27年1月2日,東京都にお生まれになり,同53年3月北海道大学医学部医学科を卒業,同56年3月北海道大学大学院医学研究科博士課程を中退,同年4月北海道大学医学部助手として法医学講座に奉職されました。昭和58年6月北海道大学より医学博士号を受領,その後,講師,助教授と昇任され,同61年9月より同62年7月まで英国・リーズ大学法医学教室に留学,平成4年1月北海道大学医学部教授に就任,同27年3月の定年退職まで34年にわたり,法医学の研究・教育に従事,同年4月に北海道大学名誉教授の称号を授与されました。定年退職後も特任教授として研究・教育,医学研究科の運営等に携わる半ばでのご逝去でありました。
 先生は法医学者として死因究明等のための法医解剖(主に司法解剖)の実務に長年携わり,大きな社会貢献をされてこられました。警察・海上保安庁・検察庁等から依頼される法医解剖に誠実に対応され,これまで約3,000件の法医解剖に携わり,1,540件の法医解剖の執刀をされました。鑑定実務を第一とし,生じた問題を解決する目的で研究(調査・実験)を行い,得られた知見を実務に還元することを重視し,実務と研究は常に表裏一体であるという姿勢を貫かれました。学生の教育,人材の育成に関しても実務を中心にそれに役立つ研究を行うことにより人材を育て,大学院生はもとより,警察,海上保安庁からも研修生を受け入れ,学位を得た者も少なくありません。
 法医学全般に関する幅広い研究はもとより,教授就任以降は年齢推定・身長推定・窒息等における溢血点の発生機序・損傷の鑑定・死後経過時間の推定法等に関する法医診断学の研究を多数行い,多くの論文を発表されています。日本法医学会では長年,理事を務め,日本の法医学研究の発展と一般市民に対する法医学的知識の普及に尽力されてこられました。
 教育・研究に対する厳しい姿勢をお持ちの一方で,穏やかで巧まざるユーモアを兼ね備え,洒脱な俳句やエッセーをも物する文才を兼ね備えたお人柄を惜しまずにはおられません。
 長年にわたるご労苦とご功績を偲びつつ,心からのご冥福をお祈り申し上げます。

(医学研究科・医学部)

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