訃報

名誉教授 五十嵐 清(いがらし きよし) 氏(享年90歳)

五十嵐 清  氏  名誉教授 五十嵐清氏は,平成27年9月12日にご逝去されました。ここに生前のご功績を偲び,謹んで哀悼の意を表します。
 先生は,大正14年5月12日に新潟でお生まれになり,昭和23年3月に東京大学法学部をご卒業後,東京大学特別研究生を経て,同25年4月に法経学部助教授として本学に赴任されました。昭和34年には法学部教授に就任され,同36年には北海道大学評議員,同41年には法学部長・法学研究科長に就かれ,本学の管理運営にもご貢献されました。平成元年に定年退職されるまで39年もの長きにわたり,比較法,民法,国際私法などの教育,研究に従事され,本学法学部・法学研究科草創期の礎を築かれました。本学ご退職後は,平成元年から札幌大学法学部教授,同17年から北海学園大学法務研究科教授を歴任され,同20年3月にご退職されました。
 先生は,日本における最初の比較法講座の担当者であり,比較法原論のパイオニアとして知られるばかりか,機能的比較法を具体的に民法の各分野に応用し,比較法が民法の解釈に有用であることを実証的に明らかにされました。具体的には遺留分制度,瑕疵担保,契約における事情変更の原則,人格権論などが挙げられます。また,研究者として自ら範を示されるとともに厳しい姿勢で後進の指導に当たられ,多くの比較法,民法の研究者を育成されました。平成15年にはそれまでのご功績により,瑞宝重光章を受章されました。その後もご逝去される直前まで研究の手を休められることはなく,生涯現役の研究者として90年にわたる生涯を全うされました。平成27年には名著『法学入門』の第4版,『比較法ハンドブック』の改訂版を刊行,ライフヒストリーを口述した『ある比較法学者の歩いた道 五十嵐清先生に聞く』を出版され,ご逝去の直前にはついにライフワークとされた『ヨーロッパ私法への道 現代大陸法への歴史的入門』を脱稿されました。研究者としての先生の矜恃を見る思いがします。
 ここに謹んで先生のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。

(法学研究科・法学部)

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