観光学高等研究センターではメディア・コミュニケーション研究院の協力を得て,地域の歴史的遺産を対象に研究活動を行っています。今回の公開講座では,地域に存在する過去の記憶の蓄積施設である民俗資料館や博物館などのアーカイブや,宗教的・祝祭的あるいは大衆的な意味づけによって誕生したモニュメントにスポットライトをあてました。アーカイブ施設による資料の取捨選択(キュレーション)は,地域のアイデンティティに一体どのような作用を及ぼすのか,講師によって異なる7つの視点から考察を深めていく講座を組み立て,10月1日から11月12日の毎週木曜日,全7回にわたって情報教育館3階スタジオ型多目的中講義室で実施しました。
第1回目は,「図書館は地域のタイムカプセル」と題して松本秀人学術研究員が,身近なアーカイブ施設である図書館に注目し,全国の様々な図書館の事例を紹介しながら,本講座全体の概論を講じました。
第2回目は,「偽の記憶が生み出す観光文化―青森県新郷村のキリストの墓」と題して岡本亮輔准教授が,青森県新郷村に残るキリスト伝説の事例をもとに,伝説から生む観光文化について講じました。
第3回目は,「地域の誇りに裏打ちされたエコツーリズム―岩手県二戸市の宝」と題して真板昭夫特任教授が,岩手県二戸市の事例を取り上げて,地域の誇りがエコツーリズムによる地域興しにどのように作用するかについて講じました。
第4回目は,「風景と記憶 風景から読み解く観光文化」と題して小林英俊特任教授が,風景と記憶をキーワードにして,観光地イメージを作り上げるということの本質について講じました。
第5回目は,「御馳走(ごちそう)〜異国の使者の饗応記録をめぐって〜」と題して花岡拓郎特任准教授が,古文書や史料から,地域の文化の源流を辿る方法について講じました。
第6回目は,「東南アジアにおける遺跡保存とアイデンティティ」と題して田代亜紀子准教授が,東南アジアに残る遺跡が地域のアイデンティティ形成にどのような影響を与えるかについて講じました。
第7回目は,「映画の記憶がもたらす観光現象―フィルム関連アーカイブとの関係性」と題して内田純一准教授が,国家や地域が運営するフィルム関連アーカイブと観光現象との関係について講じました。
本講座は,平成23年度の公開講座「旅の記憶,まちの記憶,出会いの記憶」の続編(実践編)として企画されたこともあり,アーカイブが果たすべき今後の役割や,観光への活用方法について,受講生からも積極的な質問があり,講師との双方向のやりとりから活発な議論が展開された回もありました。
参加率も高く,多くの受講生が修了証書を手にしました。来年度の公開講座もご期待ください。

