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スラブ・ユーラシア研究センターでロシア極北をテーマに
国際シンポジウムを開催

 スラブ・ユーラシア研究センターの定例の夏期国際シンポジウムを,「ロシア極北:競合するフロンティア」をテーマとして,7月7日(木)・8日(金)にセンター大会議室で開催し,2日間で178名が参加しました。本センターでは,日本学術振興会のフィンランドとの二国間交流事業として,「ロシア最後のエネルギー・フロンティア:極北地域の持続的発展への挑戦」と題する共同研究を平成26年から2年間行ってきました(日本側の研究代表者:田畑伸一郎)。今回の国際シンポジウムは,この共同研究の成果を発表する場と位置付けられ,このプロジェクトのメンバーではない,ロシアをはじめとする第三国の研究者も報告を行いました。
 シンポジウムでは,6つのセッションが設けられ,ロシア極北地域におけるエネルギー開発,先住民の生活,環境問題,北極海航路,ロシアの北極外交,極北のイメージなどをテーマに,計18本の報告がなされました。報告者の国別では,日本が6本,ロシアが5本,フィンランドが3本,ノルウェー,オランダ,ドイツ,中国が各1本でした。プロジェクトは学際的なもので,本シンポジウムにも,経済学,地理学,地質学,工学,政治学,国際関係論,社会学,文化人類学,文学など北極に関わる多様な分野の研究者が集まりました。例年のセンターの国際シンポジウムでは見かけないような自然科学系の研究者が参加されていたことも大きな特徴の一つでした。
 ロシア北極圏地域における石油・ガス開発や北極海航路は,原油価格低落の大きな影響を受けています。また,ウクライナ紛争に起因する経済制裁やロシアと欧米の対立も,ロシア極北地域の開発や北極をめぐる国際関係に悪影響を及ぼしています。そのような逆風の中でも,ヤマル半島におけるサベッタ港の建設や天然ガスの開発は国際的な協力により続けられており,平成29年から北極海航路を通じたLNGの輸出が始まると見込まれています。航路の安全性の確保,環境の保全,先住民の権利の保護,北極を取り巻く国際政治の把握等々,研究者が取り組むべき課題が多いことがこのシンポジウムを通じて明らかになりました。
会場を埋めた聴衆

会場を埋めた聴衆

レセプションの様子

レセプションの様子

(スラブ・ユーラシア研究センター)

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