理学部生物科学科(高分子機能学)では平成19年度から毎年,体験入学「ひらめき☆ときめきサイエンス」を実施しています。平成28年度は,7月30日(土)に次世代物質生命科学研究センターにおいて「調味料で光をねじる!!−3Dメガネの原理?−」と題し,中学生,高校生を対象に実施しました。これは,キラル分子がもつ光学活性を利用し,タブレットパソコンから放たれる光のねじれ(回転させる)を体験すること,鏡像体リモネン(オレンジの香り,レモンの香り)やカルボン(ミントの香り,キャラウェイシードの香り)の香り体験を行うことで光やキラル分子の性質を学習し,これらが身近なデバイスや創薬などの研究に活用されていることを模擬体験するものです。
本プログラムは,科学研究費補助金「ポリエステル系ペプチドミミックを指向したVCDによるバイオポリマー立体構造解析法」(研究代表者:門出健次教授)の成果をもとに,中学生,高校生が大学の先端技術に触れることにより,科学のおもしろさを感じてもらうことを目的としています。定員を上回る参加申し込みがあり,当日は中学生12名,高校生10名の合計22名が参加しました。
開講式では,科学研究費について,日本の優れた研究や技術は科学研究費によって支えられていること,またそれは国民の負託によるものであることを説明しました。開講式のあと,受講者は化学生物学研究室(門出研究室)と先端生体制御科学研究室(西村紳一郎研究室)の2グループに分かれ,大学院生による実施研究の概要説明や科学実験には重要なノートの書き方の学習を行いました。
午前の部では,光のねじれ角度を測定する装置を簡単な材料を用いて,受講生自身に制作してもらいました。また光をねじる試料(光学活性物質)として,身近な調味料である食塩,砂糖(D-グルコース,D-フルクトース,スクロース),味の素(L-グルタミン酸)を用いて指定された濃度に調製し調味料溶液を作成しました。
昼食はレストラン ポプラにて,全員でオードブルを食べながら,大学生活や体験実験などの話で盛り上がりました。昼食後は,研究施設見学ツアーを経て実験室に戻り,3Dテレビ,カナブンによる円偏光の体験,鏡像体リモネン,カルボンの香り体験も行いました。
午後の部では,光源としてタブレットパソコンを活用し,午前中に作成した各試料の光のねじれ角度を測定し,記録後,発表を行ってもらいました。発表後は実験の解説を行うことで,光を利用した“生命の起源を探索する研究”や“創薬”など,様々な分野に技術応用されていることを紹介し,参加者に科学の面白さを伝達して,将来,日本を代表する研究者になってもらえるよう努めました。その後はクッキータイム(参加者との交流会)に入り,実験の感想や,来るべき大学生活についての抱負などを話し合いました。最後に,参加者に「未来博士号」の授与を行い,全員集合して記念撮影した後,解散となりました。
事前準備は大変でしたが,参加者が夢中になって実験している様子や,熱心に質問する姿を見て,少しでも科学に興味を持ってくれたのなら頑張った甲斐があったと感じています。実施にあたりご支援をいただいた実施分担者の先生,事務担当者の方々,また事前準備や当日の実験補助に協力してくれた大学院生,学部生に厚くお礼申し上げます。