役員便り

総長 山口 佳三

次の世代のための大学経営改革:
人件費改革について

総長 山口 佳三 (やまぐち けいぞう)

 3月の教育研究評議会・経営協議会において「第3期中期目標期間における財政計画案」を提示しました。その中で,国から大学に措置される運営費交付金が年々削減される経営環境において人件費も含めた財政の見直しをする必要があり,その検討に入ると報告をしました。その後,企画・経営室と理事間の検討を経て,8月の臨時部局長等連絡会議において具体的な策として「人件費抑制のための教員人件費ポイントの削減方策案」を提案し,部局長を通して教職員の皆様に意見を求めました。その結果,ほぼ全ての部局の皆様から率直な質問や大学の将来を憂う意見,また定量的な分析に基づく建設的な提案を数多くいただきました。これを通して私たち執行部は,改めて教職員の皆様の本学及び本学のなすべき教育研究活動に対する強い想いに心を強くしました。同時に,本学も含めた国立大学法人の置かれている社会的状況や経営環境の急速な変化と,本学の経営状況を教職員の皆様にしっかり発信し,共通理解を得るための努力が足りなかったと反省しています。これを契機に教職員一人ひとりが本学を取り巻く環境の理解を深め,そのうえで共に本学が目指す国立大学法人の新しい大学経営を作りあげたいと思います。
 まず,本学の財政悪化の背景には,運営費交付金削減も含めた国の施策としての急速な「国立大学改革」があります。これは,文部科学省の下部組織としての全国均一の国立大学から,個々の大学が自律的に個性を伸ばすための経営機能を持つ国立大学法人に変わるためのものです。他方,国の財政危機や18歳人口の減少により,私たち教職員の人件費の原資となる運営費交付金の改革等が数年前から急速に進行しています。これは本学のみならず国立大学法人共通の問題です。国立大学の規模によって事情は異なりますが,全ての大学で人件費削減が避けられない状況にあります。このため,個々の国立大学法人や国立大学協会等がいろいろなチャンネルを通して要望等を繰り返しています。
 その中で,平成28年度予算において,人件費・部局の基盤運営経費に充当される(一般)運営費交付金は,本学を含む第3カテゴリーに属する全ての大学では毎年1.6%削減となりました。このような運営費交付金の削減は,今始まった話ではなく,第1期,第2期中期目標期間(12年間で10%以上)を通して行われてきました。さらに,今期(6年間で5%以上)以降も続くと想定されます。そこで,私は,財務部に指示した本学の第3期中期目標期間の財政見通しを踏まえて,人件費削減計画を含めた財政改革方針の策定が必要であると判断しました。そして,冒頭に述べましたように,3月の報告,8月の提案をさせていただきました。
 現在,教育研究の国際化,学生定員の適正化のための組織再編,機能強化,急速な研究推進,社会連携など教職員の皆様にかかる負担の増加は著しいものです。しかし,このような大学への社会的な要請はさらに強くなると予想されます。このような状況で,教職員が創造的な教育研究活動を進めるためには,18年以上にわたる運営費交付金の削減に従って大学の教職員数を単に下げるような,旧来の大学の人事制度や財務経営の延長線上ではない新しい方策が必要です。
 他方,過去12年間で運営費交付金は10%以上減少したにもかかわらず,教職員皆様の努力により本学の総収入額は,16%(運営費交付金以外の収入では55%)の増加を遂げました。運営費交付金以外の事業費は,目的が決められている特定事業費であるために単純に任期のない人件費に組み変えることはできませんが,より弾力的な人件費制度や人事制度によって,今回の運営費交付金の削減を乗り越え,さらなる削減に対しても立ち向かえる新しい国立大学法人北海道大学に生まれ変わることが重要です。
 今回の経営状況の改善は,私たち教職員にとって非常に厳しいものです。特にこの2年間はそのようなものになります。しかし,ここで作り上げられる人事制度,大学経営,外部資金制度等の改革を通して第3期中期目標期間の終わりには,大学を取り巻く新たな環境に適応できる新しい北大型の国立大学法人の体制を作りあげ,私たちの次の世代に渡したいと思います。ぜひ,皆様の知恵と力をお貸しいただきたいと考えます。
 10月に入って,2回の部局長等連絡会議で人事制度や経営改革とともに,大学の収入を飛躍的に増加させ,新しい北大の機能を強化するための外部資金調達ビジョン(例えば組織的な産学連携,大学機能の事業化,土地活用等)についても説明しました。本学の全教職員にも共有していただくために,これらの会議資料は学内向けにweb公開しています。また,この時報では関連記事を掲載しています。ご参照ください。
 最後に,本学では,他大学に先駆けて,いち早く人件費・経営改革の検討に着手して将来に向けて準備を行っています。どうぞ,次世代の国立大学法人の新しい大学制度を作るという高い見地から,この人件費制度や大学経営の改革推進にご理解とご協力をいただきますよう,お願いいたします。
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