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経済学部で札幌国税局長の特別講演会を開催

 経済学部では,札幌国税局長の山崎浩二氏による特別講演会を11月2日(水)に学術交流会館講堂において開催しました。「税務行政の現状と国税庁の取組」と題し,査察調査や納税環境の整備などの問題とともに,国際化という環境変化に対しどのように対応しているかという税務行政の現状について講演していただきました。
 山崎氏は,国税庁に勤務し,名古屋と大阪の国税局の査察部長,国税庁の個人課税課長を務められました。講演では,まず,査察調査の現状についてビデオが放映され理解を深めることができました。次に,税務行政が国際的な取引にどのように対応しているかという問題について説明がありました。特に,国際的な取引への対応の問題については,経済のグローバル化が進展する中で,多国籍企業が国際的な税制の隙間や抜け穴を利用して租税を回避している状況が説明され,これに対して世界各国で国際的な協調体制が作られつつあるとのことでした。税務当局が課税を逃れようとする国際的租税回避に対し,租税条約等に基づいて情報交換していく方向にあることが述べられました。また,移転価格税制を取り上げ,日本にある親会社が法人税率の低い国にある子会社に利益を移し,日本の法人税の負担を回避する問題を説明されました。
 さらに,確実な税金の納付と納税環境の整備の問題などについて述べられました。確実な税金の納付のため,滞納の未然防止と整理促進に努めており,悪質な納税者には厳正な対応を行っているとのこと,また,納税環境については,マイナンバー制度やe-Taxの利用などによって整備されてきている現状が述べられました。
 講演会には212名が参加し,経済学部の学生と大学院生ばかりでなく,他学部生や他大学の学生,一般の方の参加もありました。アンケートでは,参加者の多くから山崎氏の講演が非常に有益であった旨の回答がありました。
 持続可能な社会を構築するためには税制の在り方を真剣に考えなければなりません。我が国では国と地方の累積債務の合計は一千兆円を超える一方,社会保障費が著しく増大しており,どのような税でこのような社会を支えていくかが問われています。税務行政においても,国際化を含めて新しい時代に対応した新しいルールの構築が絶えず求められています。このような状況の中で,申告納税が原則である我が国において,納税環境を整備し税に対する国民の信頼を維持していくことが肝要であり,納税者が自発的に納税義務を履行する意識を高めていくような制度設計が必要になっています。国民が税に関心を持ち,税の理解を通して社会に参加し,納税を通して真剣に社会を支えていこうとする意識を持つことが重要です。本講演会が,学生に現実の問題に関心を抱かせ,真剣に社会の在り方を考えてもらう良い機会になることを期待します。
講演する札幌国税局長の山崎氏

講演する札幌国税局長の山崎氏

熱心に講演を聞く学生たち

熱心に講演を聞く学生たち

(経済学研究科・経済学部)

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