技術支援・設備共用コアステーション(CoSMOS)
持続的な成果を生み出す原動力 設備・機器の共用利用の促進と、研究支援人材の育成を 文部科学省2020年度「先端研究基盤共用促進事業(コアファシリティ構築支援プログラム)」の採択を受け動きだした「北大コアファシリティ構想」。この構想のもと本事業を中心的に推進するのが、技術支援・設備共用コアステーション(CoSMOS)だ。本学の技術基盤と研究支援人材の育成体制を統括し、持続的な成果の創出と社会還元を支える。 「大きな進展は、これまで本学にあった創成研究機構グローバルファシリティセンターと、技術支援本部という二つの組織が連携・協働体制を組んだことです」と、技術支援・設備共用コアステーション長の網塚浩教授は語る。
本学は法人化の後に、現在のグローバルファシリティセンターを中心にオープンファシリティの充実、受託分析機能の高度化など、着実に機器共用の施策を進めてきた。また、同時に技術職員の全学的な組織化と人材育成体制が整備されてきた。しかし、法人化から約15年を経て、より実質的な連携が求められるようになった。 「教育・研究の基盤を支える二本柱は『設備』と『技術支援人材』です。それぞれは二つの組織により成長を遂げてきましたが、その一方でそれぞれが課題を抱えていました。そこで持続的な発展を見据え、双方を大学の経営戦略の中にしっかりと位置付けて整備すべきであるという理念のもと、連携の母体として立ち上がったのが本ステーションです」と網塚教授。 両組織の機能を損なうことなく、うまく連動させ相乗効果を生み出すため、本ステーションは大学経営を担う理事・副学長直轄の組織となっている。また、研究・経営マネジメントの専門家組織であるURAステーションとのイノベーション関連企画での連携や、事務組織のバックアップにより、各プログラムは着実に推進されている。 設備強化と人材育成を両輪に
教育・研究においてニーズが高い既存の設備・機器に対して、その高度化を支援する学内公募型の事業も進められている。共用拠点形成プロジェクト「REBORN※」と名付けられたこの事業は、学内の既存設備・機器の共用利用を促進するとともに、設備・機器の追加や更新により教育・研究の生産性を向上させる狙いだ。 「機器の更新については、コロナ禍の現在、特に遠隔化や自動化が大きな課題です」と、技術支援・設備共用コアステーション副ステーション長の五十嵐敏文教授は語る。 共用機器の遠隔化が進めば、学内のみならず、学外からの利用者の増加も見込まれる。 「利用料収入の一部を活用し、技術支援人材のスキルアップを図っています」と五十嵐教授。 本学の技術支援人材は、分析、機械工作、フィールドなど、その専門技術は多岐にわたる。これら人材を育成し、マルチスキルの獲得やキャリアデザインができるような仕組みを将来的には構築する狙いだ。その一環として、技術職員のスキルアップのために、部局横断型の研修やマネジメントセミナーも実施されている。 さらに、本学教員が学内にどのようなスキルを持つ技術者がいるのかを検索できるシステム「ほくだい技術者図鑑」の立ち上げを予定している。「北大は広く、様々なスキルを持つ方が多くいらっしゃるので、そういった方に協力を仰げば研究もかなり進むのではないかと思いますね」と、五十嵐教授は語る。 ※REBORN:Research Equipment Boosting and Reusing Network project の略 北大生の挑戦も支援
人材育成は職員に限ったわけではない。北大生にも、その門戸が開かれている。 事業の一環として北大生向けのモノづくり支援、北大テックガレージ(HUTG)を運営し、学生自らが世の中にまだないプロダクトを提案・開発するための支援も行っている。本学教職員たちの知恵を借り、大学ならではの多彩な技術的サポートを活用しながら、北大発の未来のアントレプレナーを応援する。 「北大生に資金と場所を提供し、自分たちがつくりたい新しい『モノづくり』に挑戦してもらう、秘密基地のようなイメージです。将来的には、テックガレージの経験を生かし、起業する学生が出てくれることを期待しています」と、テックガレージの企画支援を担っている加藤真樹主任URAは語る。 テックガレージのプログラムは、春と夏の年に2回実施されており、活動資金や作業スペース・機材が提供されるほか、起業家等のゲストから学ぶ定例会も催される。同じ志をもつ仲間とのネットワークが作れることも魅力的だ。 「特に重要なのは『モノづくり』を通したコミュニティの基盤形成です」と加藤主任URA。テックガレージの出身者と現役の北大生が『モノづくり』でつながることで、北大生自身が社会との連携を築いていく。そのためには、長いスパンでの活動の継続が大切だ。本学に『モノづくり』文化を根付かせる、そのための継続的な人材育成は、本学の未来を切り拓く原動力になる。
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