統合プレインキュベーション施設 HX(エイチクロス)
北海道から世界を変える起業家を 北海道の研究開発型スタートアップ支援の中核拠点として機能するHX。起業家育成プログラム、専門家・企業・研究者の交流イベント、人材マッチングなど、様々なプログラムを実施し、研究者や学生の起業をサポートしている。 人口減少や高齢化が進む北海道。加えて、優秀な人材の道外流出などが、産業の持続的な発展に翳 りを落としている。特に、有能な若年層の道外流出が顕著であり、本学においても、卒業生の多くは道外に就職していく。 このような問題を抱える課題先進地域の北海道を、豊かで住みやすい地域へと変革するために、2021年、HSFC※1(エイチフォース)が発足した。 「HSFCでは、本学を中心に道内の15大学と高等専門学校、さらに札幌市をはじめとする自治体や金融機関など、まさに学を中心として産官金を含めたプラットフォームを組織しています。大学と協力機関が連携し、研究開発型のスタートアップをつくっていこうとしています」と話すHXの滝田陽介マネージャー。単純にスタートアップをたくさんつくり、個々の経済的な繁栄を目指すこと以上に、北海道が抱える課題をしっかりと解決していくための枠組みとして、スタートアップ支援の仕組みを構築する狙いがあるという。 そして、大学と協力機関とのネットワークをさらに強化し、事業創出を加速化させる具体的な取り組みを実施するために、2021年10月、HXが始動した。 新産業創出のきっかけとなる起業相談窓口
コンセプトは「北海道の叡智 (H)をかけあわせ(X)、旧来の産業構造にトランスフォームを起こす」とし、その想いを名称に込めているという。
HXの取り組みは、大きく4つある。起業活動支援、アントレプレナーシップ人材育成、起業環境整備、エコシステム形成だ。 「起業活動支援では、まさに直接的に起業を考えている研究者(大学教員)に伴走して起業活動を支援しています。もちろん、研究者だけではなく、学生も含みます。また、アントレプレナーシップ人材育成は学生を対象とし、起業家マインドの醸成や、起業のメソッドを提供するのが大きな目的のひとつです。起業環境整備は、まさにこのHXの運営そのものですね。HXは、次のステップに移るためのプレインキュベーション拠点として位置付けていますので、起業をお考えの方はお気軽にご相談いただきたいです。エコシステム形成は、大学内だけではなく、産官金とのネットワークを強化し、スタートアップの仕組みをしっかりつくっていこう、というのが大きな枠組みです」と、滝田マネージャーは話す。 第一線のアクセラレーター
HXには、本学所属のスタッフのみならず、小樽商科大学の教員や外部アドバイザーも在籍しており、まさにネットワークのハブになっている。 「先生たちからの具体的な相談内容としては、例えば特許や商標についてなど、起業するにあたり注意すべきポイントや、起業した後の資金調達に関することが多いです。実際に、資金獲得に向けてのコーディネートを行っています」と千脇美香マネージャー。 また、起業について漠然としたイメージを持つ学生からの相談もあるという。「就職ではなく、起業を考える学生からの相談もあり、起業のプロセスや業界について、自分の経験を踏まえてお話しています」と柳原信太マネージャーは語る。
コロナ渦に始動したHX。一年を過ぎ、対面による相談件数も徐々に増加しているという。また、イベントも積極的に開催している。 「理系だけではなく文系の学生も巻き込みたいなと。もっと起業に対する意識の裾野を広げたいと思い、2022年はソーシャルビジネスに特化したイベントを開催しました。HXを中心に、サツドラ※2のEZOHUBなど、市内の4つのインキュベーション拠点のマネージャーと連携し、週に1回の持ち回りで、ソーシャルビジネスをテーマにしたセッションイベントを行いました。累計で約100名を超える参加があり、札幌市や北海道庁、さっぽろ産業振興財団にも後援してもらいました」と滝田マネージャー。 さらに、「研究者と経営者とのマッチングイベントも開始しています」と話す千脇マネージャー。起業する際に経営者がいないという問題が生じるため、K-NIC※3と連携してマッチングイベントを開催。本学研究者のシーズに興味を示す経営者からの相談が多く寄せられたという。 「苦労よりもやりがいの方がありますよ」と千脇マネージャー。「相談に来られる先生たちに共通するのは、自分の技術で世の中を良くしたいという強い思いです。様々な方の協力により道が開けることを実感しており、人の力、ネットワークの力はとても大きいと日々感じています」と思いを語る。 本学の長い歴史の中で、北海道の産業とともに発展してきた研究も少なくない。「実学の重視」を基本理念に掲げている北海道大学。北海道が抱える課題に立ち向かい、持続可能な新しい産業の創出を目指す。 ※1:北海道未来創造スタートアップ育成相互支援ネットワーク(Hokkaido Startup Future Creation Development by
Mutual Support Network)。 ※2:サッポロドラッグストアーの略称。札幌市に本部を置くドラッグストアチェーン。 ※3:Kawasaki-NEDO Innovation Center
の略称。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、川崎市、公益財団法人 川崎市産業振興 【HX Webサイト】
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