株式会社フプの森 代表取締役 森が導く香りへの旅
建物に足を踏み入れると、ふわりと爽やかな香りが広がる。北海道上川郡下川町に蒸留所を構える株式会社フプの森は、町内の森林資源であるトドマツを活用し、精油の製造・販売を行っている。代表取締役の田邊真理恵さんがチェーンを引き上げると、釜からは蒸し上がったトドマツが姿を現し、あたりは一層、深い森の香りに包まれた。幼い頃から森に憧れ、森に関わる仕事がしたいと夢見てきた田邊さんだが、「この場所にたどり着くまでに何年もかかった」と話す。どのようにして夢を叶えたのかを伺った。 ―森への関心はいつ頃から始まったのでしょうか。 小学生の頃、『アルプスの少女ハイジ』のような暮らしに憧れたのが最初です。身近に森はありませんでしたが、自然にひかれていました。中学生になると花屋が夢になりましたが、森への思いは変わりませんでした。高校時代に湿原の生態学を研究する先生と出会い、自然を学ぶ面白さを知りました。 ―北大経済学部を選ばれた理由を教えてください。 私は千歳市出身で、高校まで千歳市や札幌市近郊で過ごしてきました。北海道への愛着が強く、当時は実家から通いながら大学で学びたいと考えていました。文系でも森や自然を学べる分野を探し、環境経済学に行き着きました。北大経済学部に吉田文和先生がいらっしゃると知り、「ここに行きたい」と強く思いました。 ―学生時代はどのように森と関わっていましたか。 課外活動で行った動植物の生態学研究が印象に残っています。 ―卒業後はどのような道に進まれたのでしょうか。 森の仕事は研究者か林業しか思い浮かばず、迷った末に、中学生の頃からの夢だった花に関わる企業へ就職しました。その後、やはり森の仕事がしたいと感じ、日本一周しながら森を見て回りました。一周しても森の仕事は見つからなかったわけですが、北海道に帰ってきて山の風景を見た時、「ここからは離れられない」と感じました。 ―下川町との出会いのきっかけをお聞かせください。 東京で開催されたエコプロダクツ展です。スタッフの方に声をかけたところ、「森の仕事がしたいなら、なぜ下川町に行かないのか」と言われ、すぐに調べて森林組合へ連絡しました。トドマツ精油工場を見学した時、学生時代にトドマツを調査していた記憶と香りが、一気によみがえりました。森で働けるように専門学校でDTPデザインを学び、インターネット販売会社で経験を積むなどして準備を重ね、2007年に下川町へ移住しました。 ―現在のお仕事と、これからについて教えてください。 2012年にNPO法人「森の生活」から精油事業を分けて株式会社化し、原料づくりから販売まで関わっています。大変ですが、幅広い仕事ができることは大きなやりがいです。
―最後に北大生へのメッセージを。 学生時代、林業について調べていても、精油事業があることは知りませんでした。興味があることは、実際に現場へ行って人の話を聞くことが大切です。遠回りをしても大丈夫。仕事は最後に選べばいいと思います。
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