3.文系部局

○演習  経済学研究科・助教授・岩田 智

本授業は,経済学部では必修であり,通常は同一の教員が3年次および4年次を担当する。

本授業の目的は,大人数の講義形式の授業とは異なり,少人数の演習形式で授業を行うことによって(定員があるため必ずしもすべての学生が希望の演習を受けられるわけではないが),2年間で興味ある分野の専門知識を深め,プレゼンテーション能力,ディスカッション能力,文章作成能力などの涵養を図ることにある。本授業の内容は,主として国内企業や国際企業の行動に関する分析,検討を行っている。

本授業は,特別なことを行っているわけではないと思うが,通常次のような方法で行っている。

3年次前期では,1冊から2冊程度の基本的な文献を輪読し,経営学に関する基礎理論や基礎知識を身につけ,問題意識の喚起を行っている。学生1人が1章分を担当し報告を行う。その際,いくつかのルールを設けている。

第1に,報告者は,報告に際して担当部分のレジュメを作成するが,内容の要約のみならず,内容に関するコメントが必要になる。また,担当部分に関しては,不明な点を調査,解明し,報告者以外の参加者のあらゆる質問に答えられるようにしておかねばならない。

第2に,報告者は,どうしても解明できなかった点に関してのみ,報告者以外の参加者に質問することができる。報告者以外の参加者は,自分自身が報告者でなくても事前に当該部分を予習することが求められており,この質問に答えねばならない。

第3に,報告者以外の参加者は,事前に当該部分を予習した内容に基づいて,不明な点などを自由に質問できる。ただし,自分自身で調査,解明できるような質問は認められない。

第4に,報告者も報告者以外の参加者も不明な点に関しては,全員が時間無制限で徹底的に議論し,可能な限りの解明を行う。その際,教員は原則として発言しない。

第5に,教員はどうしても不明な点についてのみ,解説を行う。

3年次後期では,事例研究を行い,前期で身に着けた基礎理論や基礎知識に基づいて実際の現象を分析し,また実際の現象を分析することによって理論の修正可能性等を検討している。

4年次前期では,就職活動等で時間的制約も多いが,3年次で身に着けた基礎理論や基礎知識に基づき,卒業論文のテーマの設定,検討を行っている。

4年次後期では,卒業論文の内容の報告,検討を行い,その際には3年次の学生も参加し,次年度以降の自分自身の執筆に役立てられるようにしている。

このような一連のプロセスの中で,特に学生同士の徹底したディスカッションを重視しており,そのプロセスは,授業への意欲増進,参加促進,内容理解に役立っていると思われる。

成績評価は,上記のような個々人の報告や討論,レポートや論文の内容によって総合的に評価している。

本授業では,その他にも授業の一環として合宿やコンパ等も行っており,参加感,達成感,一体感の醸成に役立っていると思われるが,他方,学生同士の協力関係も必要であり,その際には受講者人数も重要な要素になってくると考えられる。同じ少人数の演習形式であっても,極端に人数が少なかったり,多くなったりした場合には,別途工夫が必要であると思われる。


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