本科目は、看護職として、対象者に対する質の高い、安全・安楽な看護技術を提供するために、科学的根拠を基盤とした生活援助看護技術の原理・原則を習得することを目的としています。専門職である看護職は、施設内外に関わらず、対象者にとって必要な援助を、専門的知識と技術に基づいて提供し、教育することが求められています。そのためには、看護技術の科学的根拠を理解し、学生自らの動作を効率的・意図的に組み立てて技術を実践することが必要です。看護技術は対象者との相互作用のもとに成立するので、自分中心の思考から脱却し、常に対象者の心身の反応を観察し、対象者の立場から考えることが重要です。以上のことから、本科目は、演習科目となっており、学内演習の段階で、看護技術が「わかる」レベルから「できる」レベルに到達するための授業を工夫しています。
授業形態は、講義、クイズ、技術演習、技術テストという組み合わせで進行しています。授業の工夫点は、次の(1)〜(4)の4点にまとめられます。
(1) 基礎的知識を確実に習得し、演習を実施する。:看護技術の実践は、知識を習得し、その上に意味ある動作が初めて成立します。そのため、必ず講義終了後、次の授業では、10分ほどのクイズ(小テスト)を実施しています。クイズ直後、筆者が解答を述べ、学生は自己採点をします。これにより、学生自身の理解が不十分な点が明らかになり、技術演習への準備が整うことになります。このことは、学生から、知識の確認に役立ったという肯定的評価を得ています。
(2)技術実践に必要な科学的根拠を追求する。:技術実践に必要な根拠、技術実践の効果の測定など、専門的知識を追求し、研究していく姿勢を育成したいと考えています。学生のアンケート結果から「さらに新しい知識、考え、技能を修得でき、さらに勉強したくなった」という項目がやや平均値が低かったので、今後改善する点でもあります。
(3)臨床の看護ケア場面がイメージできる工夫をする。:医療環境のイメージが少ない学生たちに、看護することの喜び、意味、目的性を伝えるために、文脈を大切にしながら、臨床事例を紹介しています。事例紹介の時は、学生たちが説明に聞き入っていることを筆者にも感じ取ることができ、アンケートにも、コメントが多く自由記載され、良かった点であると評価できます。また、演習では、教員が看護技術のデモンストレーションを必ず実践し、リアリティーさと患者に向かう姿勢、熱意が伝わるように行っています。
(4)技術習得に向けた自己演習へのモチベーションを高める。:学生が自分の到達度と課題を確認し、達成感と自信を持って次の学習に取り組めるように技術試験を実施しています。技術は、『模倣』から『身につく』段階まで、段階性があり、学生が十分に身につけるには、時間と練習が必要であることは言うまでもありません。この練習が、看護技術の原理・原則に適った内容になるように、筆者の他に、森下教授、良村教授、岩本準教授、青柳助教、渡辺助教が学生の自己演習に積極的に介入しています。
授業は、学生と教員との相互作用で成立します。今回のアンケート結果は、学生たちの授業に臨む姿勢が反映していると考えており、このような学生たちと共に学べることに感謝しています。