臓器の機能が重度に損なわれた場合には、臓器置換や臓器機能補助が必要となり、臓器移植や人工臓器応用が行われている。臓器移植は提供臓器の絶対的不足,人工臓器は不完全な機能などの問題がある。このため最近は、再生医療が注目されており、すでに細胞移植が臨床において行われている。本授業では主に循環器系と代謝系の臓器機能不全に対してどのようなアプローチが行われているかについて、医学,生物学,工学および倫理などの広い視野から学ぶことを目的とした。演習であるため、講義と学生による発表会を行った。
動機つけ:興味の促進
医療現場において実際に行われていることを中心に話を進めた。また、なぜその臓器がおかしくなるのか、その対応としてどのようなことが行われ、現在に至っているのか、そのの課題は何であるのかなど、単なる現状の説明ではなく、「なぜ」にこだわった解説をおこなった。
授業内容を理解させるための工夫:判りやすい講義とアイコンタクト
受講する学生は,文系,理系,医歯薬系と多岐にわたっており、人体にたいする知識が異なっている。そのため、可能な限り判りやすい講義であることを心がけた。受講者数16 の小クラスであったため、各人の表情を確認しながら講義を進めた。その表情から説明が不十分と察せられた場合には、表現をかえて説明するようにした。プロジェクター映写を用いて、実際のデバイスなどを示しながら、講義を進めた。用いたスライドはプリントして配布した。また、人工血管、人工弁、人工腎臓、血漿分離器などでは、実際に臨床に使用されているデバイスを学生に触れてもらい理解を促進した。
学生の授業参加の促進:学生による発表会
各人が自らテーマを考え、最長で15分程度の発表を行ってもらった。発表形式はPC使用、プリント資料など、自由とした。発表の後、学生からの質問時間を設けたところ、最長20分程度にも及ぶ活発な質疑応答があった。質問内容によっては、補足説明を加えた。
成績評価:学生による評価
成績評価は、発表に対する学生全員の評価によって算定した。評価項目は、内容、発表、質疑の3項目であり、最低1から最高5までの点数付けをしてもらい、総計点の順位に基づいて秀・優・良とした。評価結果は、総計点のみではなく、各項目における評価点ごとの人数表を作成し、各人に知らせた。ランクアップを望む学生には、他のテーマに関するレポートを課したところ、4名の学生がレポートを提出した。アンケートによると、学生同士の評価を行ったこと、自分の発表がどのように評価されたかを知ることができたことに対し好評であった。
この科目は一般教育演習であり、学生の興味対象を重視した内容としたこと、学生の発表を行ったことなどが、高い評価の理由と思われる。そのため基礎的科目においては参考することは難しいかと思う。一つ感じるたことは、学生数が16名という少数であることの利点である。少人数クラスは、各人の反応を確かめながら講義を進めることが可能であり、好ましい形態と感じている。