オピニオン Opinion

総長コラム

ワンサイドシリーズ

 大学は、とうの昔から大競争時代に入っている。これだけ大学が増える一方で、少子化により大学入学の対象となる子供たちが減少しているのだから、当然である。

 競争に勝ち抜くために、大学関係者の間でも、「経営」セミナーがしばしば行われ、人気は高い。1960年代であれば、誤って、一言、口を滑らせれば、もう木端微塵にされた「産学連携」などの禁句も、今では大学のど真ん中に居座っている。

僕は、筋金入りの素人スポーツ評論家である。スポーツと名の付くものであれば、「何でも来い!!」である。外科医としてインドのニューデリーに長期滞在したときなど、日本人ではそのルールすらわからない「クリケット」にすっかりはまり、プロリーグの人気チームのムンバイ・インディアンスの試合を評論していたほどである。「無節操なスポーツ好き」と言えばそれも事実で、旅先のホテルのゴルフチャンネルで、アメリカのジュニアーの予選の中継を深夜まで見届けたりしてしまう。

 そういう単純な頭の仕組みゆえ、人後に落ちない「万能スポーツ評論家」としては、大学をひとつのスポーツチームとしてみることがある。

 もう、その衝撃は色あせてしまったが、今年のプロ野球の日本シリーズでは、パシフィック・リーグの福岡ソフトバンクホークスが、セントラル・リーグの読売巨人軍を4連勝で破った。10月の晩秋の風物詩でもある、数々の歴史的な名勝負を綴ってきた日本シリーズを見てきた者としては、実につまらないワンサイドシリーズと嘆くばかりであった。このシリーズに限らず、ここ10年余り、日本シリーズや交流戦でのパ・リーグの強さは、圧倒的である。お互いプロとして並外れた才能のプレイヤーが猛練習をした結果が、このような一方的な差になることは驚きである。

 その後、多くの専門家、僕のような“にわか解説者”が、近年のこのパ・リーグの強さとセ・リーグの弱さを分析している。結論は、ほぼ一致している。セ・リーグは、長年、巨人の独り勝ちがベースにあり、集客も巨人戦を中心に回ってきた。弱い巨人は、セ・リーグ全体の魅力を下げ、興行収益を下げることになる。そこで、巨人は他のセ・リーグのチームから、資金力にものを言わせて有力選手を引き抜き、相手チームを骨抜きにしてきた(多少、誤解があるかもしれませんが、ご容赦)。その結果が、一強他弱のセ・リーグを作ってきた。

 一方、長年、パ・リーグの観客席には閑古鳥が鳴いていた。実際、昔、今はなき大阪難波の大阪球場で南海ホークスの試合を観戦したことがあったが、オーテンジオという外国人スラッガーが放ったホームランの打球が、ピンポン玉のように飛行し、人っ子一人いないライトスタンドで大きく跳ねて、内野にいた僕の席まで戻ってきたことがあった。観客のまばらな大阪球場でカランカランと乾いた響き音が広がるのは、当時のパ・リーグの関係者にとって、屈辱的なことであったに違いない。

 その後、パ・リーグは、その悔しさをバネに実力の「パ」を目指してきた。いち早くジェネラルマネージャー制度という経営手法を導入した。そして、メジャーリーグに学び、「指名打者制」を取り入れ、若手選手の「育成」と「地域密着型」を実現してきた。その経営努力の積み重ねが、かくも大きな差となり、日本シリーズを一方的なものとして、スタープレイヤーのリベンジを期待したセ・リーグファン・巨人ファンを落胆させ続けてきた。

 大学をスポーツチームの強化と同列に論じるのは、やや無理があることは承知している。しかし、「育成」と「地域密着」そして、優れた「競争的経営力」は、大学経営にとっても勝利の方程式であることは間違いない。逆に、極端な資本の集中とスター選手の引き抜きは、大学全体の力を衰えさせるという因果の法則は、間違っていないような気がする。

 第4戦の9回裏、ジャイアンツの亀井が力ないセカンドフライに倒れ、近年まれに見る凡戦であった日本シリーズ2020が終わった。