オピニオン Opinion

年頭のご挨拶 -----「社会と歩む卓越」を目指して-----

寳金清博総長

 新年、明けましておめでとうございます。本学をご支援いただいている関係者及び地域の皆様、学生及び教職員の皆様、ご健勝で新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。

 雪に覆われた真冬の氷点下の古河講堂は、凛として、格別に美しく感じられます。私の最も好きな風景の一つです。この冷涼な気候、そして、総合研究大学の立地としては異例な降雪量が、私たち、北海道大学の固有のアセット(資産)なのだと、実感する季節です。

 北海道大学は、明治9年、西暦1876年に札幌農学校として設立され、2026年に創基150周年の大きな飛躍の年を迎えます。新年を迎え、その記念すべき年まで残り3年となりました。
 本学は、明治政府から土地を付与され(Land-grant University)、それを原資として、北海道大学初代総長の佐藤昌介先生などを中心として教職員が様々な経営戦略を駆使して、現在の姿へと指数関数的な発展を遂げてきました。この稀有な設立過程は、学内外の関係者にもあまり認識されていません。
 大学は、その成立以来、常に改革と発展を求められてきました。直近では、大きな大学基金や地域大学振興のためのパッケージが政策決定されており、さらに、大胆な変革が求められています。
 しかし、振り返ると、札幌農学校から帝国大学への移行期における大学存続の危機、太平洋戦争による社会の大きな混乱など、現下、私たちがその渦中にある変化以上の大きな変化の波を私たちは乗り越えてきています。
 その強靭な対応力の根源は、「教育」「研究」という近代の大学の社会的使命を果たす責任感にあります。そして、この社会的使命を実現するため、Land-grant Universityとして受け継がれたのは、北海道大学の「経営」の遺伝子です。これこそが私たちが受け継いだ最大の固有のアセットであると思います。

寳金清博総長

 私たちは、この新年も、不確定で不安定で、先の読めない時代の真っただ中におります。間違いなく、私たちは、時代の大きな変わり目に生きています。世界の新しい秩序の再構築、持続可能な社会への転換、そして地球市民である私たち自身一人一人のマインドセットの進化が求められています。

 こうした社会の変化を先導するために大学の役割は極めて大きいと思います。私たちは、現在、「地球」「社会」「個人」の変革を念頭に置き、西暦2030年をターゲットイヤーとして、HU VISION 2030の策定を行っており、近いうちに皆様のご評価を得たいと思っております。その中では、北海道大学の卓越した世界的研究と地域に密着した課題解決力を融合したハイブリッド大学を目指すことを掲げています。短い言葉で、「社会と歩む卓越」と表現しています。その実現のためには、私たちが先人から継承してきた経営力の遺伝子が今こそ必要だと思います。

 114年の風雪に耐えてきた古河講堂から少し目を移すと、白い工事用のフェンスで覆われた建物が見えます。同じく北海道大学最古の建築である旧昆虫学及養蚕学教室や旧昆虫標本室です。今年の秋、この歴史的建造物が「北海道ワイン教育研究センター棟」として生まれ変わります。持続可能な社会を目指す「社会と歩む卓越」北海道大学の象徴として再生し、皆様にご覧いただきますので、ぜひ御期待ください。
 兎年です。ウサギのジャンプをあしらった年賀状もホームページにアップしますので、お受け取り下さいませ。

 今年も一年、北海道大学へのご支援、ご協力をお願い申し上げます。末筆ではございますが、皆様の今年一年のご健勝をお祈り申し上げて、年頭の挨拶とさせていただきます。

寳金清博総長からの年賀状