メッセージ
新しい大学像 Novel Japan University を目指して
4年後の私たち・
あなたたちへのメッセージ
2025年の総長選考・監察会議の決定を経て、文部科学大臣の任命を受け、2026年4月1日より2030年3月31日までの4年間、北海道大学総長として再任されました。今後4年間、ご支援をよろしくお願いします。
この総長特設サイトのメッセージは、今後4年間、このまま掲載される予定です。年頭の挨拶のように、毎年、書き換えることは想定していません。
24時間後の世界でさえ見通すことの難しい時代、価値観がジェットコースターのように目まぐるしく変化する時代に、4年間、色褪せないメッセージを残すことは、容易ではありません。早ければ、半年後くらいには、賞味期限を過ぎた文章がここに残る可能性は高いと思います。少子化の中で、私立大学の中には存立継続すら困難な大学もある状況で、北海道大学の在り方も大きく問われることは間違いありません。
しかし、そうした予想不可能性と複雑性に満ちた時代であるからこそ、大学は、揺るぎないビジョンを持って、色褪せないミッションを掲げるべきです。それは、時代の大きな変化のうねりの前では、身の程知らずの無謀なことかもしれません。
しかし、「世界は変えることができる」という生き方を、私たち大学人が選ばなければ、一体、誰が世界を変えることができるのでしょうか?これこそが、札幌農学校設立以来の志である「Be
Ambitious」の精神であり、この言葉は、学生に向けられた言葉であると同時に、私たちの大学そのものに向けられた言葉です。
今、大学には、社会を変える力が求められていると思います。人財育成「教育」、イノベーション「研究」、社会実装「地域創生・医療」を通じて、間違いなく、大学には社会を変える特別な力があります。
新しい大学像
Novel Japan University
2023年に、北海道大学は、2030年に向けた中期的ビジョン、HU VISION
2030を発表しました。その中で、持続可能なWell-being社会の実現をミッションとし、その達成に向けたメカニズムとして、卓越性と社会展開力の二軸からなる「新しい日本型の大学モデル」“Novel
Japan University”を提示しました。
この大学像を提示した当時、私は、この“Novel Japan
University”を明確な言葉で定義することができないでいました。しかし、この間、学内外で議論を深めてきた中で、北海道大学が目指す新しい大学像は、2つの大学像のハイブリッドであると考えるようになりました。それは、①「戦略的総合融合研究大学」と、②「壮大な地域創生装置」です。つまり、北海道大学は、戦略的に研究を統合・融合する大学であると同時に、地域の未来を創り出す大規模な装置として機能する大学を目指しているということです。
日本社会に限らず、産業革命以後の近代国家において、大都市への一極集中と地域の崩壊は、200年以上に及ぶ深刻な世界的課題であり続けています。エネルギー自給率、食料自給率ともに極めて低い東京に、未だに、膨大な労働人口・若年層が流入し続けています。そして、私たちはこの深刻な国家的脆弱性に対する解決の処方箋を提示できないまま、今に至っています。
一方、明治以来、壮大なcountrysideであった北海道の価値は、「北の大地」という象徴的な言葉で表現されてきました。正直、私は、「北の大地」という表現があまり好きではありません。「北の大地」は、近代史において、常に「可能性の大地」のままであり、むしろ、人口減少などの負の課題の先進地となってしまいました。
しかし、今、北海道では、何か歴史の必然の力に導かれるように、世界が注目する3つのopportunity、①豊富な再生可能エネルギー開発、②持続的かつ自然再生的な食料生産、③AI社会を先導する北海道デジタルパーク構想が、同時に進行し始めました。産業革命以来、回転してきた「大都市への一極集中と地域の崩壊」という巨大な歴史の歯車が、ギシギシと音を立てて、ゆっくりと停止し、「地域創生」に向けて逆回転し始めています。それは、数学的な特異点、あるいは、最近の言葉では、シンギュラリティ“singularity”と言ってもよいかと思います。
この北海道の地に150年前に生まれた北海道大学は、日本でも最大規模の学部・大学院・研究所等を有する総合研究大学として発展してきました。そして、その真価は、まさに、こうした多様な学術の融合にあり、また、世界最大級のフィールド、test bedに恵まれた環境を活かし、「戦略的総合融合研究大学」であることが、北海道大学が示す新しい大学モデルの一つの在り方です。
そして、「北の大地」という「褒め言葉」で讃えられてきた北海道が、真の意味で「地域創生」の旗手として、200年以上の近代国家の在り方を転換し、「壮大な地域創生装置」としてデジタル田園都市国家構想を実現するフロントランナーになる機会が訪れました。これは、世界の課題解決そのものです。
北海道大学は、「戦略的総合融合研究大学」であると同時に、「壮大な地域創生装置」として、人財育成とイノベーションを進める大学モデルを目指します。これが、”Novel
Japan University”です。
次の150年に向けて
この文章を書いている2026年は、北海道大学の前身である札幌農学校が設置された1876年から数えて150年目であり、創基150周年記念の様々な事業が行われます。私たちにとってこの機は、私たちの大学の来し方・行く末を考える機会でもあります。
来年2027年は、創基151年、そして、2030年には、創基154年目を迎えます。いずれ、50年後には、創基200年を迎え、150年後には創基300年を迎えます。次の150年に向けて、大きなビジョンを掲げ、その目標実現に向けて着実に歩を進めつつ、2030年を迎えたいと思います。
2026年(令和8年)4月1日
略歴
生年月日 : 昭和29年 9月24日
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昭和54年3月北海道大学医学部卒業
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昭和61年11月~平成元年1月米国カリフォルニア大学デービス校客員研究員
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平成2年7月北海道大学医学部附属病院助手
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平成3年3月博士(医学)(北海道大学)
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平成3年10月柏葉脳神経外科病院医師
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平成4年6月北海道大学医学部助手
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平成4年6月北海道大学医学部附属病院講師
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平成8年11月米国スタンフォード大学・
英国王立神経研究所文部省在外研究員 -
平成12年11月北海道大学大学院医学研究科助教授
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平成13年11月札幌医科大学医学部教授
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平成22年3月北海道大学大学院医学研究科教授
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平成22年9月~平成25年3月北海道大学病院副病院長
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平成25年4月北海道大学病院教授
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平成25年4月~平成29年3月北海道大学副理事
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平成25年4月~平成31年3月北海道大学病院長
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平成29年4月~平成31年3月北海道大学副学長
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平成31年4月北海道大学病院客員教授
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令和元年9月柏葉脳神経外科病院参与
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令和元年9月北海道大学大学院保健科学研究院特任教授
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令和2年10月北海道大学総長