法学研究科 宮城大蔵講師にサントリー学芸賞・中曽根康弘賞奨励賞 |
このたび,法学研究科の宮城大蔵 専任講師に,財団法人サントリー文化財団よりサントリー学芸賞(政治・経済部門),および財団法人
世界平和研究所より中曽根康弘賞奨励賞が授与されました。
サントリー学芸賞は,前年1月以降に出版された著作物を対象に選考され,広く社会と文化を考える,独創的で優れた研究,評論活動をされた方に対し贈呈される賞であり,今回が第27回目にあたります。また,中曽根康弘賞は,政治経済文化の諸分野における若い世代の国際的な活躍を促進するために今年から設けられたもので,初代の受賞者となりました。
宮城氏の『戦後アジア秩序の模索と日本−「海のアジア」の戦後史 1957〜1966』(創文社,平成16年)は,日米英などにおいて開いたばかりの外交文書を駆使した外交史・国際政治史研究です。これにより,東西冷戦の文脈のもとで従来軽視されてきた日本の外交余地を,「賠償」や「開発」援助といった経済分野に見いだし,解明・弁証することに成功しました。
具体的には,インドネシアにおいて左傾化するスカルノ政権を,米国が冷戦の文脈で「共産主義」として見限り,英国が落ちゆく帝国としてマレーシア紛争に拘泥する中,日本は脱植民地化の潮流のなかの「民族主義」として支え続けた点,またスカルノが失脚した後も,スハルト政権下で開発主義に移行するインドネシアに,さしたる困難なく関与し続けた点が説得的に論じられています。これは,戦前と戦後で断絶したかに見える日本のアジア外交に,一定の連続性を見いだす作業ともなっています。
これらの特徴を兼ね備えた本書は高く評価され,今回の受賞に至りました。
同氏は,昭和43年生まれ。NHK記者を経て,平成13年一橋大学大学院法学研究科国際関係専攻博士後期課程修了。平成12年より日本学術振興会特別研究員,平成13-15年(財)日本国際問題研究所客員研究員,平成14-16年立教大学法学部助手を務め,平成17年より北海道大学大学院法学研究科講師に就任されました。
今回の受賞を契機として,概して無力なものとして語られがちな戦後日本外交の役割について解明を進めるべく,今後一層の貢献が期待されています。 |
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サントリー学芸賞授賞式 |
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(法学研究科・法学部) |
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