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総合博物館でパラタクソノミスト養成講座を開催

 総合博物館では,平成16年より,パラタクソノミスト養成講座を開催しています。今年度前期は,北海道大学教育GP「博物館を舞台とした体験型全人教育の推進」のもとで計15講座の開講が予定されており,6月には,下記の日程で3つの講座が開催されました。
 各講座には,多くの学生や市民が参加し,標本や資料の収集,分類,整理,保管等の方法を少しでも身につけようと,熱心に取り組んでいました。

 
昆虫パラタクソノミスト養成講座(中級:マルハナバチ属)
 6月5日(土)と6日(日)に,当館資料部研究員の稲荷尚記氏と伊藤誠夫氏を講師に迎え,北海道大学総合博物館で開催され,学生や市民ら9名が参加しました。
 1日目の午前中は,まず,伊藤講師によるマルハナバチ属の系統,分類,形態についての講義が行われました。講義の後には,午後に行われる野外観察の事前準備として,観察場所,捕獲と観察の方法等についての説明を受けました。午後は,博物館中庭,花木園周辺,そして農学部庭園にてマルハナバチの捕獲と種同定のための形態観察を試みました。室内に戻ってからは主に乾燥標本の実体顕微鏡による観察を行いました。受講者ごとに札幌で観察可能な7種14個体の標本セットを渡し,性(♂と♀),カースト(女王蜂と働き蜂),及び種を区別するための形態的特徴を詳細に確認しました。
 2日目,稲荷講師がマルハナバチの送粉生態学について講義を行いました。特に講義後の質疑応答では,外来種であるセイヨウオオマルハナバチの移入問題についての質疑が参加者から多く寄せられ,活発に議論がなされました。昼食後は,植物園へと徒歩で移動し,マルハナバチ類の観察を行いました。前日と同様の好天に恵まれ,灌木園で計4種約10個体を観察できました。博物館に戻ってからは,一日目に続いて標本を用いた同定形質の観察を中心としながら,参加者各自の疑問に対して講師陣が可能な限り答えました。
 
講義を行う伊藤講師
講義を行う伊藤講師
 
土器パラタクソノミスト養成講座(初級)
 6月6日(日)に,当館学術研究員の小野裕子氏を講師に迎え,北海道大学総合博物館で開催され,10名の受講生が参加しました。
 午前中は,まず,小野講師より分類やパラタクソノミストの意義についての説明を受け,続いて,考古学における分類について,生物分類との違いや考古学資料の種類についての講義が行なわれました。その後,実際の資料を用いた土器の基本的な記録法の実習(土器断面(セクション)取り)に取り組み,真孤を用いての口縁部の外側輪郭線や,完形土器の実物(復元形)と対照にしながら胴部の輪郭線を方眼紙に写しました。
 午後も引き続きセクション取りを行ない,その後,ライティングボックスの上にセクション取りをした方眼紙をのせ,トレースし,写し取ったセクションを切り取り,固体番号を記入して台紙に貼り付けました。次に,拓本に取り組みました。拓本の意義について説明の後,切り抜いた画仙紙を土器の表面にかぶせ,湿らせた脱脂綿で空気を押し出すように密着させ,乾くまで待ちます。続いて,拓本で用いる墨やタンポの使い方の説明を受け,画仙紙の乾き具合をみて,タンポで軽く叩きながら墨を打っていきました。その後アイロンをかけ,白の紙を裁ち落とし,スプレーのりを裏面に塗布して,台紙に張り付けました。
 
土器の記録法について説明する小野講師と受講生
土器の記録法について説明する
小野講師と受講生
 
岩石パラタクソノミスト養成講座(初級)
 6月13日(土)及び14日(日)に,当館資料部研究員の在田一則氏を講師に迎え,北海道大学総合博物館で開催され,16名の受講生が参加しました。
 1日目は,まず,基礎講義が行われ,地球の内部構造や,プレートテクトニクス,岩石が作られる場所についてなど,岩石を深く知る上で必要な基礎知識について学びました。午後からは,支笏火山などの身近な地域の話を交えながら,岩石の特徴や,含んでいる鉱物などについての説明があり,同時に,たくさんの岩石や鉱物を肉眼やルーペで観察しました。また,博物館の「アイランド・アーク」の岩石展示や,北大の敷地内にある石碑や岩石でできた建造物を見ながら,解説が行なわれました。
 2日目の午前は,まず,上皿天秤を使って,岩石の密度の測定の実習を行ないました。この実習で,岩石の種類と密度には大きな関係がある事を体感し,その後,様々な種類の堆積岩や変成岩の標本を実際に見ながら,解説を受けました。午後からは,火成岩をルーペで鉱物を見分けたり,様々な岩石標本を自由にしました。
 
キャンパス内の岩石について説明する在田講師と受講生
キャンパス内の岩石について説明する
在田講師と受講生
 
(総合博物館)
 

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