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経済学部で札幌国税局長の特別講演会を開催

 経済学部では,札幌国税局長の橋本元秀 氏による特別講演会を11月15日(月)午前10時30分より学術交流会館・小講堂において開催しました。特別講演会のタイトルは「日本の税制と税務行政」で,税制の歴史的な変遷と税務行政の現状と課題について講演していただきました。
 講演者である橋本氏は,大蔵省金融局,金融庁,国税庁で勤務され,特に,国税庁では査察課長を務められた経験があります。まず,日本の税制については,日本の社会経済状況の変化に応じて,国の税収構造がどのように歴史的に変遷してきたかについて語っていただきました。農業を中心とする明治時代は,酒税と地租が最も大きな割合を占めていましたが,昭和時代に入ると所得税を中心とする税制に移行し,さらに現代社会では消費税が導入されています。
 興味深い点を2つ挙げると,第一に,課税対象が明治時代は酒と土地という「物」でしたが,これが「所得」という概念的なものに移行していく過程を説明されました。第二に,酒税に対する課税方法の変遷で,免許税から生産量である造石高に応じて課税する方法に推移し,さらに酒蔵からの移出量に応じた課税方法に変わっていく過程を説明されました。その際,当時の酒税の脱税に対する取り締まりを非常に興味深く語っていただきました。昔の素朴な話を聞き,税の世界に引き込まれていく感じでした。
 次に,税務行政については,査察調査について実際の体験を踏まえて語っていただくとともに,税務行政のIT化と国際化の問題についても説明していただきました。
 講演会には多数の出席者があり,経済学部の学生と大学院生ばかりでなく,他学部の学生や一般の方の参加もありました。当日,参加者にアンケートを配布したところ,参加者の多くから橋本氏の講演が非常に有益であった旨の回答がありました。
 現在,我が国は深刻な財政危機に直面しています。国の増税に対して国民の十分な理解が得られないため,十分な税収を確保できず,財政が維持できない状況にあります。国民が税に関心をもち,税の理解を通して社会的に参加し,真剣に社会全体として持続可能な制度を考えていく必要があります。このような講演会が,学生の皆さんにとって現実の経済問題に興味をもち,真剣に社会の在り方を考えるよい機会になることを期待します。
 
講演する札幌国税局長 橋本氏 質疑応答の様子
講演する札幌国税局長 橋本氏 質疑応答の様子
 
(経済学研究科・経済学部)
 

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