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スラブ・ユーラシア研究センターが国際シンポジウム
「危機の30年」を開催

 スラブ・ユーラシア研究センターは,7月10日(木)・11日(金)に,夏期国際シンポジウムThirty Years of Crisis: Empire, Violence, and Ideology in Eurasia from the First to the Second World War(危機の30年:第一次〜第二次世界大戦期ユーラシアにおける帝国・暴力・イデオロギー)をセンター大会議室で開きました。(科学研究費基盤研究A「比較植民地史:近代帝国の周縁地域・植民地統治と相互認識の比較研究」との共催)
 ロシア・ウクライナ紛争や中国の台頭で世界秩序が流動化する中,今年が開戦100年に当たる第一次世界大戦を再考する動きが世界的に広がっていますが,このシンポジウムでは第一次世界大戦を単独でとらえるのではなく,直前のバルカン戦争から戦間期の様々な危機,そして第二次世界大戦までを視野に入れました。特に戦争・暴力と帝国・植民地の交差に注目し,諸帝国間の境界地域が戦争の中で持った重要性,この30年間における帝国主義の揺らぎ・変容・再活性化がもたらした暴力や新しい植民地政策,帝国主義と反植民地主義の間で生まれた様々な思想を論じました。
 1日目は,第1セッション「第一次世界大戦:帝国に挟まれた戦場」,第2セッション「崩壊に向かうロシア帝国の中のムスリム」,第3セッション「食糧と飢餓のポリティクス」,2日目は,第4セッション「第一次世界大戦が革命とナショナリズムに与えた影響」,第5セッション「広域圏の思想と政治」,第6セッション「戦間期から第二次世界大戦期の植民地主義」が開かれました。報告者は17名(うち外国人9名),討論者,司会者は各6名でした。報告者の世代構成は,ロシア・ソ連史の世界的権威である長谷川毅カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授(当センター元教授),マーク・フォン・ハーゲン・アリゾナ州立大学教授から,本学大学院生を含む若手研究者まで,多彩でした。そのほか2日目には付属企画として,外国人報告者による特別セミナー「旧ソ連地域における紛争」も行いました。2日間全体の参加者は計98名に上りました。
 スラブ研究センターからスラブ・ユーラシア研究センターへ改称後初の国際シンポジウムにふさわしく,ロシア・ソ連を中心としながらも,東は日本,朝鮮,ベトナムから,西はオスマン帝国,バルカン,ドイツに至るユーラシア諸地域の歴史を縦横に議論する場となり,大変刺激的な思考材料を得られた2日間でした。
第1セッションの報告者

第1セッションの報告者

第4セッションでの議論の様子

第4セッションでの議論の様子

(スラブ・ユーラシア研究センター)

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