平成26年度学士学位記授与式を迎えられました卒業生の皆さん,卒業おめでとうございます。また,これまで皆さんを物心両面から支え,励ましてこられたご家族や関係者の皆様に対しまして,北海道大学の教職員を代表して心よりお礼とお祝いを申し上げます。
本日,晴れて本学の学士学位記を授与され巣立っていかれるのは,12学部合わせて2,484名です。このうち女性が769名,留学生が14名です。留学生の皆さんには,環境も習慣も異なる異国の地での生活は大変であったろうと思います。無事卒業の日を迎えることができましたことを心より嬉しく思います。
卒業生の皆さんが北海道大学で過ごされた4年ないし6年の生活は,いかがでしたでしょうか。皆さんの中の多くの人は,本学における総合入試での最初の卒業生です。皆さんは,1年生では,総合教育部で学部を超えた仲間との学びを経験されました。そうした皆さんが,入学前に抱いていた夢や希望あるいは期待は,実現できたでしょうか。夢はかなったという人,多くの友人を得たという人,クラブやサークル活動で充実した日々を過ごしたという人もいるでしょう。一方で,辛い思いをし,悩み,挫折を味わったという人もいるかもしれません。今,学士の課程を終え,卒業という区切りの時,これまで自分の歩んできた道を振り返る良い機会であろうと思います。
皆さんは,北海道大学の教育研究の基本理念が,「フロンティア精神」「国際性の涵養」「全人教育」そして「実学の重視」の4つであることをよくご存知だと思います。このような理念の下で学ばれた皆さんは,高邁な大志と国際的な視野を持ち,幅広い教養を通して,自ら考え行動できる能力を養ってきたはずです。このエルムの学園での学びの時を,振り返って,次のステップへの糧としてください。
さて,卒業後の皆さんは企業に就職する人,国や地方の公務員として働く人,専門的知識と技術を持って医療の世界へ進まれる人,あるいは大学院に進学される人など,それぞれの進まれる道での活躍が期待されています。また,皆さん一人ひとりが大きな期待と同時に若干の不安を抱かれていることでしょう。
ここで,皆さんが巣立っていこうとされています社会の,この4年ばかりの状況を振り返りたいと思います。4年前の2011年3月には,後期日程入学試験の前日,東日本大震災が発生し,皆さんの中にも受験にあたって大変な時を経験された方もいらっしゃいました。それまで,リーマンショックによる世界的な経済の冷え込みのため,停滞を余儀なくされていた日本の社会は,さらなる困難の時を迎えました。その中で,被災者の振る舞い,阪神大震災の教訓をも生かした社会のいろいろな階層からの支援の取り組みは,日本の社会に前途への明るい光となりました。さらに,政権も変わり,2012年の末以来は,アベノミクスが登場し,経済的にも不況脱出の可能性が見えてきたとされ,今年に入ってからは,さらに明るさが増してきたといわれています。しかしながら,同時進行に起こっています,日中韓の政治的摩擦,ウクライナ情勢とEUの経済危機,さらに中東情勢といった世界の政治状況が,日本国内の将来の動向を左右しています。
こうした状況の中でも,私は,皆さんが時代に流されないしっかりとした指針を持って,これから踏み出される人生を歩んでほしいと願っています。その意味で,今から述べる2つのことを是非,心に留め置いてほしいと思います。
その一つは,生涯にわたって学ぶ姿勢を身に付けることです。皆さんを取り巻く現代社会において,技術革新の流れは一段と速まり,ここ10年のITの発展は,通信手段,情報発信のありようを個人のレベルでも一新させました。それによって,皆さんが身に付けるべき素養・知識も一変したといえます。大学で学んだことも,これから大学院に進んで修得する学問・技術も,日進月歩で進化し,10年後にはもはや通用しない知識・技術となっているでしょう。ですから,皆さんは生涯学び続ける習慣を,必然的に身に付けなければなりません。そして,自ら学ぶことの大切さを体得した人は,これからの未来を自力で切り拓いていけるでしょう。また,学び続けることは,絶えざる自己革新を求めることでもあります。フロンティア精神を持ってこれからの人生を切り拓いてください。
2つ目に,心に留めてほしいことは,これからの人生を,常に社会と向き合って歩むということです。皆さんは,これまで,それぞれの家庭,学校,学部という環境の中で,育まれ,自己研鑽を積まれてきました。その歩みは,しばしば受け身的なもので,自己を見つめることに偏っていなかったでしょうか。そして,大学の学びの中で,自己を点検し,社会の中での立ち位置をも探し求めてこられたことと思います。そうした皆さんが,社会に踏み出さんとするこの時,これからは,自分を育んでくれた社会にどう関われるのか,どんな貢献ができるのかを常に問い続けてほしいと思います。時代と共に,社会の様相は,絶え間なく変化します。その中にあって,しっかりと自らの立ち位置を点検し,自らの進路を切り拓いて,社会との関わりを求めてください。そして,社会への貢献を常に意識してください。
本日,学位記授与式を迎えられた皆さんにとって,北海道大学での学びを通して得た知識や能力,課外活動等で得た経験,そして何よりも学生生活の中で得た,生涯の友となる友人は,これからの皆さんの歩みの糧であります。こうした糧を胸に,巣立っていかれる皆さんには,行かれた先に,学部ごと,あるいは,地域の北大同窓会もあります。こうした同窓生との交わりをも通して,母校である北海道大学のこと,皆さんの後輩のことも思い出してください。
最後になりますが,皆さんが,夢と勇気と大志を持って,新しい船出をされることを祈念しております。皆さんの母校である北海道大学もさらなる国際化と,「世界の課題解決に貢献する大学」たることを目指して挑戦することを約束して,告辞の結びとします。