只今ご紹介いただきました,連合同窓会会長,42年卒業の石山です。
卒業式には初めて出席しましたが,女性の着物姿が華やかで,丁度冬枯れの山のあちこちにコブシや桜が咲き始めた時の景色のようできれいですね。
皆さん,ご卒業おめでとうございます。今年は2,484名の新しい同窓生を迎えることができ,私達同窓生にとっても沢山の新しい仲間が誕生した喜ばしい日であります。皆さんも,さあいよいよ自分の能力を発揮し,大きな世界に羽ばたいていくぞと決意も新たにされ,またどんな人生が待っているのか少々の不安も感じている日なのかと思います。私もそうでしたが,後々振り返ってみますと,この北大のキャンパスで過ごした日々は,人生で一番平穏で心静かに過ごせた日々であっただろうと思います。
社会に出ますと常に大きな変動や変化に遭遇します。近年ではリーマンショック,東北大震災,尖閣列島問題による中国内における日本製品叩き等が起こりました。100年に一度の不況と言われたリーマンショックの時には,私どもの会社では全ての工場の稼働率が20%まで下がってしまいました。通常,製造業では80%程度の稼働率を維持しないと安定した利益は確保できませんので,全社員の給料をカットし,身を縮め売れるものしか作らない体制を固めて過ごしました。幸い1年ほどで世界の経済も復活してきてほっとしたところに大震災がやってきました。その後は震災の影響で手に入らない部品の代替として色々な中国品が入ってきて,コモディティー品はかなり置き換わられてしまいました。
このような世界経済や政治による大変動や天変地異による大きな変化はいつ私達の上に降りかかってくるかわかりません。その様な時に,人は生きていく上で,またリーダーであれば,皆さんは必ずリーダーとしての役割を担っていくわけですが,その役割を果たしていく上で,自分の理念や信念を持つことが重要だと思います。
北大には大変すばらしい4つの基本理念があります。私は仕事をしながらこの基本理念を読み返し,行動を検証しています。
「フロンティア精神」については「一般的に,営業は販売したことのない物は売れない,工場は作ったことのない物は作れないものですが,これでは事業は細ってしまうだけですから,販売したことのない物を売れる営業,作ったことのない物を作れる工場になろう」と言って常に社員の尻を叩いています。
「国際性の涵養」では当社も中国,東南アジア,インド,ヨーロッパ,アメリカ,メキシコ等に工場を持っています。私の役割はもっぱらその地のパートナーのトップとお酒を飲んで,ウィンウィンの経営を行うための人間関係の構築です。先日も中国山西チワン自治区を訪問した時は,市のトップに大歓迎されて,朝から豚の頭蓋骨つきの焼肉を食べてきました。今年末には北海道にも新幹線が走るようになりますが,新幹線のボディーは殆どアルミでできています。私達はこの材料の70%以上のシェアを持っていますが,この材料のアルミはドバイから購入しています。ドバイまで自分で出かけていき,工場の秘密の部分も見せていただき,大変しっかりした操業を行っていたので,担当者に指示してテストを繰り返し,我々の必要とする合金に合わせてもらい購入するようになったものです。ドバイの社長とは砂漠のキャンプで食事をしながら,ベリーダンスを楽しんでいます。彼が,石山,あのダンサーと一緒に踊ったらと言いましたが,あんな踊りをしたらぎっくり腰になってしまうので,断って,あんたが踊って見せてよと言いましたところ,父親に見られたら撃ち殺されてしまうよということで,それはそうだなと二人で大笑いしたこともあります。私の国際性もこの程度ではあります。
「全人教育」は豊かな人間性をいかに養うかに尽きると思います。国際性にも通じますが,全ての人を大切にする,そして,その人が大切に思っていることを自分も大切にする。この心で接すればどこであっても,言葉は通じなくても人は仲良くなれるものと思います。
「実学の重視」,これも非常に大切なことです。大学を卒業してきた人達は知識を学ぶことは上手ですが,その知識を述べた時,実際にそのようになるかが問題です。本当の道理を理解し実際に応用できるには現場での経験が大切です。特に後進国では,現場で問題を見つけその場で解決してあげると,あとは先生として尊敬されます。
私は若い時分にはつらい時,壁にぶつかった時は良く恵迪寮寮歌「津軽の海」を歌っていました。最近は「都ぞ弥生」も歌えないで卒業してきて,同窓会に入って初めて覚える人もかなりいますが,世界中どこに行っても,どんな偉い人でも,同窓生は「都ぞ弥生」を一緒に歌えば一発で全員が北大の学生気分に戻ってしまいますので,ぜひ「都ぞ弥生」を歌えるようにしておいてください。
東京国際フォーラムで鈴木章先生のノーベル賞受賞記念講演会を開催した時には1,300人の歌声が一つになって,会場の責任者が素晴らしいと驚いていました。
私は,「津軽の海の渦潮分けて,大き想いを北斗に馳する 若き心は北の自然に抱かれて今,野心培う」これを歌ってまた前向きに進もうと元気を出していました。
皆さんもぜひ自分の生きていくうえでの理念とか信念を養い,どのような時でも前向きに進んで行っていただきたいと思います。
また,どうぞ同窓会活動にも積極的に参加をしてください。今は若い人達が幹事を務めていますので,東京では年寄よりも若い人達が多い同窓会になってきました。
ご卒業誠におめでとうございます。
これで私のお祝いの言葉とさせていただきます。