総合博物館のリニューアルオープン後,最初の企画展示として8月5日(金)から9月25日(日)まで「ランの王国」を開催しました。
ラン科は陸上植物の3大科の一つとされ,2万種にも及ぶ種多様性を誇ります。本企画展示では,ラン科の特徴,多様性と分類体系,人間文化との関わりに加え,花と昆虫との共進化,生物間相互作用などを分かりやすく説明し,静的に捉えられがちな植物の動的な側面を紹介し,植物生態学・進化学への興味を引き出す展示を試みました。また,盗掘や環境破壊などによるラン科植物の減少,絶滅危惧問題についても紹介し,自然保護,環境保全について考える契機となることを目指しました。
8月5日(金)のオープニングセレモニーでは,1階企画展示室前で,礼文町の小野 徹町長,総合博物館の秋元信一資料部長によるテープカットを行い,続いて本展示を担当した当館の高橋英樹教授の解説案内による内覧会を実施しました。ポプラチェンバロの演奏も行われ,華やかなセレモニーとなりました。
開催期間中は,様々な関連イベントを実施しました。公開セミナーでは「北大植物園のラン科コレクション〜歴史と現在〜」をテーマに植物園の永谷 工技術専門職員より話がありました。日本のラン科保全活動について礼文島と小笠原諸島での現状,課題についてのセミナーには,ご当地キャラクターの礼文町の「あつもん」と小笠原村の「メグロン」が登場し,会場を楽しませてくれました。他にも,展示にちなみ花と香りをテーマにした演奏会を4回開催し,ポプラチェンバロの音色に包まれる心地よいひと時を過ごしていただくことができました。
今回の展示では,「ボタニカルアート」と「香り」を効果的に活用しました。植物画グループflos societyによる色鮮やかで繊細なボタニカルアートの数々は,企画展示室だけではなく,カフェや多目的スペースからなる知の交差点エリアにも彩りを添えていました。展示室入口では,週替わりでランの香りを応用した化粧品や香水の香りで来館者を迎え,日本原産の「フウラン」の昼と夜の香りの違いを実際に体験できる展示コーナーも用意しました。会場内で展示解説を担当するミュージアムマイスター認定コースの学生が,花粉を運ぶ夜行性のスズメガに合わせて,夕方から次第に香り高くなるフウランの性質を説明すると,来館者の皆様に大変関心を持っていただけました。また,博物館ボランティアの協力のもとで実施した調香体験ワークショップでは,フウランの香りをベースに,様々な香りビーズをブレンドするオリジナルのにおい袋作りを行いました。
学内外の多くの方々にお力添えいただき「ランの王国」開催期間中,博物館には5万人を超える来館者を迎えることができました。皆様に心より感謝申し上げます。