1.授業の目的・内容
「経営管理I」は,経営管理における基本的な概念や理論を習得し,現実の企業の行動を経営学的観点から理解することを目的としている。わたしが担当した平成17年度は,最近の「経営戦略」に関する理論と実践の両面に関して,できるだけ丁寧に議論・解説することを心がけたつもりである。
2. 授業実施上の取り組み・工夫
(1) 毎回の講義の冒頭10分間程度,たとえば「回転寿司のベルトはなぜ時計回りが多いのか,また,ベルトは1秒間に約何p進むか」といった,広い意味で企業経営に関連し,かつ,学生の興味を喚起しそうなトピックを提供した。「アイスブレーカー」としての意味が大きいのだが,授業開始時刻に遅れて入室する学生に対する配慮も含まれている。
(2) 講義にはPowerPointを用いた。使用するスライドは,@ポイントの大きい極太ゴチック体フォントで,Aできるだけ箇条書きにし,B図表を多く用いるようにした。スライド全ページを縮小印刷し(8スライド/頁),レジメとして毎回配布した。レジメがなければ,学生はスライドの内容をメモすることに気を取られ,肝心の説明を十分に咀嚼・理解する余裕がなくなってしまう。レジメは,Webからもダウンロードできるようにした。PowerPointファイルをPDFに変換してサーバにアップロードするだけなので,案外手間がかからなかった。
(3) 講義内容に関連する簡単なクイズ(例:都心のデパートの代替財にはいかなるものがあるか)に答えてもらうなどして,受講者数が150名をこえる大教室ではあったものの,学生に発言の機会をできるだけ与えるよう意識した。ただし,発言をする学生は特定の20名程度にほぼ限定されてしまった。
(4) 1回の講義で1テーマが完結するように心がけた。(話が脱線してしまい,講義時間内で完結しないことが何度かあったけれども…。)
(5) 成績については,@事例分析レポート,Aフィールドリサーチ・レポート(フレッシュネスバーガーとモスバーガーの比較),B講義中にビデオをみせ内容について論述させる「ビデオ・レポート」,CPPM(製品ポートフォリオ管理図)の作成,D論述式期末試験,の合計点によって絶対評価を行った。評価のチェックポイントを複数設けることによって,その都度,学生の講義理解度を把握するとともに,試験のみの「一発勝負」による(半ば運任せ的な?)成績評価にならぬよう配慮したつもりである。
(6) 出席は一切とらなかった。抜き打ちの小テスト等も行わない旨を予め明言した。出席しないと点数にならない課題(上記,ビデオ・レポート)を実施する場合は,少なくとも2週間前に告知した。出欠確認であれ小テストであれ,抜き打ちで行うのは少々意地悪であるように感じられる。自戒の念を込めて申すならば,講義そのものの魅力で出席を促すのが王道というものであろう。
3. 反省点
(1) 上記(3)と関連するが,大教室で学生がどんどん発言するような「双方向型」講義を行うことは,現在のわたしの力量ではかなり難しい。学生の積極的発言を促す方法について有効なアイデアがあれば,是非ともご教示いただきたいと思う。
(2) 学生アンケートでも指摘されたが,各種課題が講義の後半(6月と7月)に集中してしまったきらいがある。講義の進行にあわせて臨機応変に課題を作り出せるのが理想だが,意外に難しい。また,適切なレポート課題やビデオ教材をある程度ストックしてはいるものの,企業の事例は比較的短い期間で陳腐化してしまう弱みがある。
4. 最後に
わたしのゼミに所属する学生の何名かが,この講義を教室最前列の座席で受講してくれた。彼らの熱意と配慮にはなかなかに感心したものである。ところが,ある日の3講時,そのうちの1人が机に突っ伏して居眠りをはじめた。昼食直後だから,睡魔に襲われるのも当然といえば当然である。とはいえ,講義中,目の前でゼミ生に居眠りされることがあれほどショックだとは,その時まで気づかなかった。わたしの学生時代,ゼミ指導教官の講義で堂々と居眠りをしたバチがこういう形で当たるとは…!
まさに「因果は巡る」である。