理系部局

○物理学IR 農学研究科・助教授・川村 周三

1.授業の目的・内容

この授業は全学教育科目の基礎科目の物理I Remedialです。受講対象は農学部の1年生で,高校において物理を履修しなかった学生(北海道大学受験において物理を選択しなかった学生)です。授業内容は「力学と熱」です。農学部における専門科目や実験研究,さらに大学院農学研究科の修士・博士課程における研究に際して物理の知識が必要となる場合が多くあります。そこで,このような時に役立つような物理学の基礎,および自然現象を物理的な視点から観察する力を身に付けることを授業の最終目標としています。農学部の学生の基礎科目は農学部の先生が教えるのが良い,との考えにより2004年から授業を担当し,2005年で2回目の授業となります。

2.授業実施上の取組・工夫

(1)農学における物理

北海道大学の受験において物理を選択しなかった学生を対象とする授業であるため,数式を使って物理の問題を解くことは極力控えることとし,物理の概念や考え方,自分の周りの自然現象を物理的な眼で見ることを身に付けることができるように配慮して授業を行いました。また,多くの農学部の学生は「農学は化学と生物が中心であり,物理はあまり関係ない」と誤解しているため,授業の中で時には教科書を離れて,農学部で行われている具体的な研究(自分の研究も含む)を例として取り上げ,物理がどのように農学で使われているかを教えました。この「農学における物理」の内容は好評でした。

(2)動画(ビデオテープ)の活用

力学は,教科書や黒板の説明だけでは分かりにくく,動画を使った説明が良いと考え,教科書の内容に対応して作られたビデオテープ(15分程度)を時々利用しました。ただし,ただビデオを見せるだけでは,学生から「眠たくなる」との意見が出たため,必要に応じて(15分の間に4〜5回程度)ビデオを止め,分かりやすい解説を加えた。その結果,ビデオ上映の時間は20分程度となった。このビデオも,学生にとって自分の周りの出来事(自然現象)として力学を理解するために役立ちました。

(3)授業の最後の小テスト

授業の最後の10分程度の時間を使い,その日の授業内容に関する小テストを毎回行いました(これは出席票も兼ねている)。この小テストは,学生に授業中の緊張感を持たせ,授業に集中させることに役立ったように思います。小テストの正解は次回の授業の最初に黒板に書き,さらに最終回の授業の最後にすべての問題とその正解を書いた資料を配布しました。この資料は学生にとって定期試験の準備に役立つものとなりました。

(4)学生からの意見と質問

小テストの用紙の下部に,その日の授業に対する感想や意見,疑問,質問などを書く欄を設けています。多くの学生(80〜90%程度)がこの欄に記入をしており,感想や意見は授業の改善に役立つものでした。また,次回の授業の最初に,意見や質問にできる限り(時間が許す限り)答えるように努めました。同じ内容の質問がたくさんあることは,自分の説明が不十分であったことを示しており,授業の改善にも役立ちます。

(5)成績評価

成績評価は,出席が20%,小テストが20%,定期試験が60%で行いました。授業の履修届を出した学生は112名でした。平均出席率は95%であり,すべての授業に出席した学生は77%でした。評価(100点満点)平均値は82点であり,106名の学生が単位を取得しました。単位を落とした学生は出席回数が少なく定期試験を受けなかった学生であり,残念に思っています。

3.おわりに

多くの学生から(自称,物理嫌いの学生から),「とても分かりやすく物理に対する見方が変わった」,「噛み砕いた説明が,物理アレルギーには良かった」,「物理が面白そうになった」,「物理がどのように農学で使われているか良く分かった」などの意見をいただきました。私自身も物理を教えることに慣れていなかったので,授業の準備に多くの時間を費やしましたが,自分自身の勉強にもなった,と思っています。


top先頭へ戻る