理系部局

○水族生理学I 水産科学研究院・教授・都木 靖彰

授業の目的・内容

この授業は水産学部生物生産科学科2年生約60名を対象にしたものである。この学科の学生は3年進級時に機能系と生態系の2コースに分かれるのであるが,生物の機能を解明する学問である生理学の授業は,機能系コースに進級するとどのようなことを将来学ぶことができるかを知るためのイントロダクションのような役割をもっている。そこで,生理学とはどのような学問分野なのかを伝えることを目的に,生物が生きてゆくために獲得したさまざまな機能の精巧さや,美しさ,それを解明することの楽しみを理解してもらえる授業をめざしている。

水族生理学はIとIIとからなる授業で,Iでは魚類の生理を,IIでは水棲無脊椎動物の生理をとりあげる。15回の授業で取り扱える分量には限りがあるので,水族生理学Iの授業ではわれわれ陸上脊椎動物と魚類でその機能・メカニズムが大きく異なっている「呼吸」と「浸透圧調節」のみをとりあげ,なるべく詳細に説明する。その際,常にヒトとサカナを比較してその違いを際だたせ,水生生物の特徴を理解できるように配慮している。また,3年次の春におこなう学生実験でも魚類の浸透圧調節に関することを取り扱うため,学生は授業で学んだことを実際に目で見て手で触れて感じることができる。

授業実施上の取組・工夫

最初の講義の時に授業のアウトラインを話し,この講義では魚類生理のごく一部の項目しか説明しないこと,それ以外の項目については自主的に勉強してほしいことを伝える。さらに,講義で取り扱った項目のみから定期試験をおこない,その結果で成績を決めること,小テストやレポートは課さないことも伝える。したがって自主勉強はあくまで自分のためにおこなう勉強であって,それは成績に直結しないことになる。これでは勉強の効果は疑わしいものとなるかもしれないが,大学では学びたい者が学べばよいと私は信ずる。われわれが相手にする学生は子供ではないのであって,どれだけのことを学んで卒業するかは本人の責任である。一から十までまわりがお膳立てをすると,かえって学生の成長をさまたげるのではあるまいか。

授業全体はストーリー性・論理性をもって構成するようにしている。また,授業では折に触れて授業全体のアウトラインを示し,今学んでいることが授業全体のどの部分に当たるのかを理解できるようにしている。個々の授業は板書が中心である。図表だけはプリントしたものを配布し,同じ資料をパワーポイントファイルにしてスクリーンに映し出し,説明に用いる。板書を重視するのは,自分で工夫して,「自主的に」ノートを作り上げることが勉強になると信ずるからである。板書をおこなうと,内容まで説明したプリントを用いる授業やパワーポイントを中心として説明する授業と比べて,その進行はゆっくりとしたものとなり,取り扱える内容は少量となる。しかし,学生がノートをとり,理解するスピードとは一致しているようである。授業のなかほどで5分程度中休みをとり,気分転換をする。また,授業終了時間の10〜15分前には授業を終え,個別に質問を受け付ける。質問は多くはないが,丁寧に答えることを心がけている。特に質問票を配布することはしていない。

以上のように,授業でおこなっている特別な工夫というものはない。ただ,授業の準備は念入りにやること,授業は一所懸命やることを心がけている。学生の評価が高かったのは,こちらの熱意が伝わったからではないかと考える。


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