この授業は,平成19年度で3期目となる(平成18年度までは「留学生と日本人学生のためのレポートの書き方入門」という題目で開講)。第1回目の授業には70〜100人程度の受講希望者が集まるが,彼らが口を揃えて言うのは,「レポートの書き方を習ったことがない」「レポートを書くことに不安を感じる」ということである。高校によって差があるようだが,論理的な文章の書き方や日本語について,意識したり学習したりした経験を持つ者は少ない。
そのため,この授業では,論理的な文章を書くために必要なことを意識化し実行できるようになることを目的とし,以下のような到達目標を掲げている。
平成18年度からは,図書館による「情報検索入門」も授業に組み込んだ。
評価は,授業中のパフォーマンス(参加・提出物)と各自が選んだテーマ(他の授業の課題となっているものは除く)による最終レポートによって行っている。
担当者は,留学生センター「一般日本語」において留学生に対する文章表現指導を行っている。
この演習で採用したシラバスは,留学生に対して実施したものを土台としているが,留学生と日本人学生のニーズには異なる点もあるため,3年間の実施を通じて改善を行っている。詳細については小林(2007)を参照されたい。
学習項目は,論理的な文章を書くために意識すべき事柄を抽出し段階的に配列している。そして,それぞれの項目について,一方的に説明し覚えるのではなく,できるだけ自ら頭を使って学習することを活動の主眼においている。授業の流れとしては,まず意識化のための課題を行い,必要な知識を提供し,その後まとまった課題を行うことが多い。授業では毎回宿題を課し,各受講者に対して個別にフィードバックを行っている。
学習活動で特に重視しているのは,クラスメイトに実際に読んでもらうために書くこと,およびグループワークである。一般教育演習という授業の性格上,受講者は全学部から来ており,お互いを知らないことが多い。クラスメイトに対して論理的に書き情報を伝えることは真のコミュニケーションとなる。また,グループワークによって,自分とは異なる視点を知ることは論理的に書くうえで有益であり,また,人間関係の構築が学習動機を向上させる。
「レポート作成のための基礎日本語」は平成20年度も開講予定である。3年間の実践をもとに,今後もよりよい授業にしていきたい。
参考文献:
小林由子(2007)「留学生日本語授業の日本人学生への応用-一般教育演習『レポートゼミ』での実践-」『高等教育ジャーナル』第15号,北海道大学高等教育機能開発総合センター,pp.65-71