「メンタルヘルスと看護」は必修科目で、医学部保健学科看護学専攻の2年後期に開講しています。本科目は精神に障害を持つ人々とその生活を理解し、援助の基本的な考え方や具体的な方法を学習することを目的としています。内容は、精神に障害を持つ人々への急性期における安全確保と人権擁護を視野に入れた介入から、慢性期における社会復帰への援助など広範囲に及びます。精神の障害は多様であり、また客観的に捉え難いという特徴がありますので、学生には適切なイメージを持ちながら、学びを積み重ねていくことが要求されます。また、約80名の学生を対象とした講義形式の授業ではありますが、学生一人一人が精神看護の実践能力を向上させるということも期待されています。
毎回、講義の終了前10分間で、出席の確認も兼ねて講義に対する質問と感想を名詞サイズの用紙に記述し提出してもらっています。質問に対しては、可能な限り次回の講義で返答するようにしていますが、学生は同じ講義を受けた仲間がどのようなことを疑問に思ったのか、またその返答について興味関心を寄せて聞いてくれます。教員としても、訂正や不十分な説明を補うことに役立ちますし、回数を重ねる毎に、それぞれの学生の特徴が見えてくるため、学生を理解する上で役立ちます。
講義の最終回には、精神に障害を持つ当事者の方々(共同作業所ヨベル)との意見交流の機会を設けています。これは、学生がそれまでの学びを確認するとともに統合させることをねらいとしています。その日に来てくださった当事者の方々と学生の相互作用を大切にし、教員は言葉を補う程度の最低限の介入に止めています。学生には大変好評で、当事者との触れ合いを通して教員が期待する以上の学びを得ています。
基本となる授業内容が大きく変わることはありませんが、その年の学生と教員との相互作用とその共有体験を授業に反映させるように努力しています。
時間割に基づいて「精神看護学概論」と「メンタルヘルスと看護」を並行して行っていましたが、今回のアンケートで「・・・前半と後半と分けて開講してほしいと思った。」という意見がありました。その意見を受けて検討したのち、平成19年度からは「精神看護学概論」を前半、「メンタルヘルスと看護」を後半に集中して行い、学習の順序性に対する改善を行いました。本来そうあるべきと思っていましたが、教員側の都合により実現出来ていませんでした。今回、学生からの意見が改善に向けての後押しとなりました。