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“Research for Laughter, Research for Thinking” 「『研究』で笑い 、『研究』で考える」を開催しました

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先日東京都で行われた、「イグ・ノーベル賞の世界展」のオープニングセレモニー。北海道大学からも、イグ・ノーベル賞受賞者である電子科学研究所長・教授の中垣俊之さん、農学研究院 准教授の吉澤和徳さんが登壇しました。(オープニングセレモニーの様子はこちら

その翌週、イグ・ノーベル賞の創設者である、マーク・エイブラハムズさんに、本学札幌キャンパスにお越しいただき、中垣さん、吉澤さんとのトークイベントを開催しました。

(北大構内にて。左から、中垣さん、エイブラハムズさん、吉澤さん)

(本学の遠友学舎で行われました)

当イベントをコーディネートし、司会を務めたのは、「イグおじさん」こと古澤輝由さん(北海道大学 CoSTEP 特任助教)です。古澤さんは、イグ・ノーベル賞の大ファンで、ハーバード大学で開かれる授賞式に訪れており、サイエンスZERO (NHK Eテレ)でもイグ・ノーベル賞について解説しています。

(司会の古澤さん。シルクハットを被って、授賞式でのエイブラハムズさんにそっくり?)

イベントは、エイブラハムズさんによる、イグ・ノーベル賞についてのレクチャーから始まりました。過去にイグ・ノーベル賞に輝いた、「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」が次々に紹介され、会場は笑いに包まれました。

(エイブラハムズさんも、もちろんシルクハットを被って登場)

次に、エイブラハムズさん考案の「Two/Too Lectures」が行われました。これは、自身の研究内容を、より分かりやすく伝えるために、全く違った2つの方法でそれぞれ2分以内に説明するという新しい試みです。観客の一人がタイムキーパーとして借りだされ、30秒経過するごとに、全員で「ドキ!ドキドキ!」と叫び合図します。2分以内に終わらなかった場合は、スピーカーが話し終わるまで「ドキドキドキドキ!…」と言い続けます。

初めに挑戦したのは、中垣さん。中垣さんは、粘菌に迷路を解く能力があることを発見した業績に対して、2008年イグ・ノーベル賞認知科学賞、そして粘菌を用いて鉄道などの最適ネットワークを設計する研究で、2010年イグ・ノーベル賞交通計画賞と、二度受賞しています。1つ目のレクチャーでは、粘菌を生物として説明し、2つ目では、粘菌をネバネバ、つまり単なる物質と捕らえて物理的に説明しました。

(スピーチする中垣さん。キャップは、授賞式に出席した際にも身に着けていたものだそう)

続いての挑戦は、ブラジルの洞窟に棲む昆虫「トリカヘチャタテ」の生殖器の形状が雌雄逆転していることを発見した業績に対して、2017年イグ・ノーベル生物学賞を受賞した吉澤さん。吉澤さんは、トリカへチャタテについて学術的に説明した後、今度は、トリカヘチャタテを人に例えて説明しました。

(吉澤さんは、2つのスピーチに加え、独自の30秒スピーチも披露!

2分という制約はなかなか厳しく、会場全体が「ドキドキドキドキ!」と喚く中、なんとか両者ともレクチャーを終えました。その後、エイブラハムズさんが観客に、それぞれの1回目と2回目のレクチャーでは、どちらの方が理解しやすかったか決を採りました。「説明が上手な先生は、通常の説明が伝わらなかった時に、全く別の例えや視点から説明を加えることがあります。それを試してみたかったのです。」とエイブラハムズさんは語ります。実際に、説明の仕方の違いによる理解のしやすさは、結構人によって違うのだという、興味深い結果となりました。

(「ドキドキをもっと大きな声で!」と会場を煽る、エイブラハムズさんと古澤さん)

続いて、会場からエイブラハムズさんに質問が寄せられました。イグ・ノーベル賞創設のきっかけについて問われたエイブラハムズさんは、「科学雑誌の編集をしていたときに、世の中には、素晴らしくて面白い研究をしている人が山ほどいるのに、多くの人はそれを知らないということに気が付きました。また、最高なもの(もしくは最悪なもの)に贈られる賞は多々ありますが、それ以外の切り口で称えられることはこれまでにありませんでした。だから、この賞を作りました」と答えていました。また、「最近は実用的な研究が求められる傾向にありますが、まだ誰にも理解できないような研究こそが、真の研究なのではないでしょうか」と話していました。その他にも、一番お気に入りのイグ・ノーベル賞はどれかなど、様々な質問が寄せられました。

その後、古澤さんからのサプライズで、2013年にイグ・ノーベル化学賞を受賞した「玉ねぎを切ると涙が出る過程を生化学的に解明した研究」をもとにして開発された、切っても涙が出ない玉ねぎ「スマイル・ボール」が運び込まれました。実際に、エイブラハムズさんにカットしていただき、観客全員で試食しました。目に近づけても、涙は流れません。

CoSTEP現役受講生であり、ハウス食品の社員である正村典也さんが、スマイル・ボールの説明をしました)

(眼鏡を外して確かめるエイブラハムズさん)

最後に、イグ・ノーベル賞授賞式に倣い、観客が受賞者に向かって一斉に紙飛行機を飛ばし、イベントは幕を閉じました。

(エイブラハムズさんの合図に合わせて、一斉に紙飛行機を飛ばします)

「今回、北海道大学にイグ・ノーベル賞受賞者が二人いるというだけでなく、エイブラハムズさんの出身がマサチューセッツ州ということで、同郷の偉人の一人としてクラーク博士の存在を知っていたことなど、不思議な繋がりを感じました。

イグ・ノーベル賞では、様々な研究を面白おかしく伝えていますが、しかし一歩興味を持って踏み込むと、それが非常に真摯な研究の営みの過程や結果であることが透けて見えるように演出されています。科学を広めるという文脈でのサイエンスコミュニケーションを強く意識していると、エイブラハムズさんの口から直接聞けたことも、私にとっては大きな収穫でした。

今回のイベントは動画配信もされる予定ですが、このイベントから、ノーベル賞受賞者もイグ・ノーベル賞受賞者も両方輩出できる、北大の研究の広がり、豊かさを感じていただければ幸いです。」と、古澤さんは語ります。

(古澤さんお手製のイグ・ノーベル賞Tシャツが贈られました。ロゴデザインは、札幌大同印刷株式会社 岡田善敬さんです)

(さっそく身に着ける中垣さん、吉澤さん)

イグ・ノーベル賞が設立されたことで、ユーモア溢れる研究が広く知られるようになりました。それは何十年も人々の心に残り、様々な思いを巡らせてくれることでしょう。いわゆる「役に立つ」研究とは一体何なのか、研究の良し悪しをそのようなもので判断してしまって良いのか、まさに、「笑って、そして考えさせられる」トークイベントでした。

(最後に、参加者全員で記念撮影)

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(文:総務企画部広報課 研究広報担当  菊池優 写真:写真家 中村健太

掲載日:2018年10月5日